2020年12月3日、列車運転ゲームの定番ブランド『電車でGO!』シリーズの最新作『電車でGO!! はしろう山手線』がプレイステーション4向けに発売された。リアルな運転感覚を楽しむゲームだが、もはやリアルな運転を再現できていない。現実の電車が進化しすぎたからだ。

 リアル運転ゲームの行き先について、スクウェア・エニックスの野本遼プロデューサーと尾崎義規ディレクターにお話をうかがった。

スクウェア・エニックスの野本遼プロデューサー

山手線は進化はシリーズの根幹を揺るがす大事件

 前作『電車でGO! 特別編 復活!昭和の山手線』から10年。現実の山手線は進化し、運転はラクになった。ただし、それは『電車でGO』シリーズの根幹を揺るがす大事件だ。

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 なにしろ、現実の山手線は自動的にピッタリとホームドアに合わせて停まる。この装置をTASC(Train Automatic Stop-position Controller)という。駅に近づくと自動的にブレーキをかけて、定位置にピタッと停めくれる。『電車でGO』の「定刻通りに正しい位置で電車を停める」という要素が自動化されてしまうとゲームにならない。

「このゲーム自体のコンセプトとして、鉄道にそれほど詳しくない方でも遊んでもらいたい。それも、できるだけ難しく思われないようにしたい。山手線が選ばれた理由も、みんなが知っているっていうところです。一番知名度があって親しみやすい。

 鉄道のことを全然知らない人も、『これ面白そう』っていう印象はありますよね。ふだんできないことを体験できる。しかもファンタジーRPGではない、剣と魔法の世界じゃない遊び。電車を運転したいと思ってもできないけれど、でもゲームならみんなができる」

 

 実在物を再現するゲームの難しさは、ゲーム性と現実性のバランスだ。速度超過で作動するATS(自動列車停止装置)や運転席に速度指示を出すATC(自動列車制御装置)はゲームのルールとして採用できる。しかしTASCは再現しない。ここがゲームとシミュレーターの境界線だ。飛行機でも実際の旅客機は、緯度経度を入力すれば自動的に到達してくれる。PC用ソフト「Microsoft Flight Simulator」もオートパイロットモードがある。リアリティを楽しみたい人に向けたマニアックなモードだ。