2020年12月3日、列車運転ゲームの定番ブランド『電車でGO!』シリーズの最新作『電車でGO!! はしろう山手線』がプレイステーション4向けに発売された。VRモードの没入感がすごい。最新の「電車運転ゲーム」はたいへんなことになっていた。

 

私は電車の運転室の中にいた。

 VRモードでゲーム開始。「うわっ、すごい」声を上げた。

 私の頭にケーブル付きのヘッドセットが装着されている。スキューバダイビングで使うマスクを分厚くしたような形。正面は黒い曲面で、白いフレームで囲んだデザイン。重さは600グラムを少し超えるくらいだという。私が持っているスマートホンの3倍くらい。しかし苦にならない重さだ。ヘッドセットの重量配分が適正で、バンドでしっかり固定されているからだろう。

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 ヘッドセットは自分で装着できるけれども、今日は初体験ということで、スクウェア・エニックスの広報担当者が2人がかりで装着してくださった。私はプレイステーション4のコントローラーを両手に持って姿勢を正すのみ。「なんだか、介護されているみたいですね」と言ったら笑われた。きっとステキな笑顔だろうと思うけれど、視界は真っ暗だから見えない。

 

 スイッチを入れてもらうと大画面が現れる。この状態でVR非対応のゲームもバーチャルな大画面で遊べるそうだ。しかしVRモードに切り替えると、そこは運転室の中だ。手元に機器類が並ぶ。もちろんメーターも実物通りに動く。顔を上げれば原宿駅。渋谷駅に向かう線路の風景だ。左側を見れば埼京線の線路があり、右側の真横を向くと、乗務員室扉の向こうにプラットホームがある。そうそう、山手線だよね。懐かしい気分になる。

後ろの窓から見たとおりの、本物そっくりの造形

 振り返ると客室と運転室を仕切る壁があって、窓に遮光スクリーンが降りていた。ああ、私や電車好きが客の立場なら、展望がなくてガッカリするだろう。しかし、運転士としては安堵する。孤独な仕事場である。視線がない方が集中できる。いや、本職なら後ろに誰がいても集中できるかもしれない。

 運転室の中にいるだけで気分が上がる。実際に、あの後ろの窓から見たとおりの、本物そっくりの造形だ。立ち上がり、しゃがみ、機器の裏まで眺めたい。しかし私は運転士である。お客様を目的地まで走らせなくてはいけない。背後で作動音が聞こえた。戸締良し。ランプを確認。これで発車できる。

 ゲームコントローラーの左手のスティックを倒すと加速する。モーター音が高まる。画面上では自分の手が映らないところに違和感があるけれども、すぐに慣れる。そもそも運転中に手元を見るヒマはない。クルマの運転と同様に、前方を注視し、ときどきメーターを眺めるだけだ。制限速度指定の合図があり、速度を調節してチェックポイントを通過。少しでもスピードを超過すると自動的に非常ブレーキがかかった。厳しい。しかし経験を重ねると慣れる。