シリーズ20年目の「再起動」
それから7年の沈黙を経て、タイトーは2017年にゲームセンター向け『電車でGO!!』を稼働させた。技術の進化に合わせて巨大な筐体に大型モニター3枚とタッチパネルを採用し、指さし確認などの操作を実際に指で行うなど、リアリティを追求した。ICカード乗車券風のNESiCAに自分のプロフィールや成績を登録できる。オンラインアップデートで路線が追加されており、現在は総武線(市ケ谷~秋葉原)、中央線(大曽根~名古屋)、大阪環状線(森ノ宮~大阪)、阪神本線(大物~甲子園)、名鉄名古屋本線(神宮前~栄生)が追加されている。
「電車でGO!」シリーズ20周年記念作品、ゲームセンター版としては17年ぶりの新作となった。シリーズのファンは大歓喜。鉄道ファンや電車好きも注目した。17年前にくらべて、鉄道趣味が広く認知されるようになっていた。「女子鉄、ママ鉄、子鉄」と呼ばれる新たな鉄道ファン層をゲームセンターに引き寄せた。
そのお披露目会に参加したとき、「『電車でGO! FINAL』を出しちゃっていますよね。早まりましたね」とやや皮肉交じりで言ったら、タイトーの担当者は胸を張って「よく見てください。ビックリマークが2つになっています。『電車でGO!!』です。完全新作です」と返した。なるほど参りました。たしかにいままでの作品とは段違いにクオリティが高い。
家でじっくり遊ぶというコンセプトでVR版誕生
それからさらに3年経って、スクウェア・エニックスの家庭用ゲーム機版『電車でGO!! はしろう山手線』が誕生した。ただし単なる移植作ではない。ゲームセンターでは一部区間だったけれど、『はしろう山手線』は内回り電車で1周できる。全区間を走破すると、約1時間半かかる。家でじっくり遊ぶというコンセプトになっている。
「開発当初はVR版を作ろうという話で、1周というわけではなかったんです。でも、(企画書や試作品を)いろんな人に見てもらったら、『1周するよね? するんだよね』という話になって(笑)。ゲームセンター版は1プレイごとの課金ですから、お金を払ったのですぐに終わっちゃうともったいない感じがしてしまう。だから短めの区間でキッチリ遊べるようになっています。家庭用ではそういった制約はないので、好きなところを好きなだけ遊べるようにしました」
そのかわりプレイステーション4版には「耐久走行」というオリジナル要素が付いた。これは『復活!昭和の山手線』に近いルールで、ミスが続くと“ミッションゲージ”が減っていき、ゼロになるとゲームオーバーとなる。リアルタイムで「失敗した」とわかった方が面白い。家庭用ならではの仕組みといえる。
写真=杉山秀樹/文藝春秋