没入感はあるけど酔わない
鉄橋や保線作業員がいるところ、撮り鉄が構えているところなどでは警笛を鳴らす。すれ違う列車が見えたら前照灯の向きを下げる。こうした作業を指定通りに実施すると加点される。一方、指定時刻に到着できない、正しい位置に停車できないと減点だ。電車を走らせて停まるだけのシンプルなルールだけど、やってみると忙しい。なんとか次の駅にたどり着く。VRは3D空間を認識できるからだろうか、停止位置の誤差は小さい。テレビ画面の2Dより、VRモードの方が遊びやすいようだ。
無事に任務を完了したときの達成感。戦闘機ゲームで基地に帰還したときの高揚感に通じる。それにしてもVRは素晴しい体験だった。没入感がスゴイ。
「VRでゲームというと、たとえば怪物を見つけて戦いに行くけれども、すぐ後ろから誰か来ているぞ、という臨場感が楽しいんです。しかしあんまり激しく動くゲームだと酔いやすい。それに比べると『電車でGO』はレールの上を前に動くだけ、没入感はあるけど酔わない。むしろ景色を作りこみやすくなってリアリティが出ます」(スクウェア・エニックス)
爆発的な人気の転機となった『笑っていいとも!』
いまでは「電車を運転するゲーム」として定番の「電車でGO」シリーズだけど、1997年にゲームセンターに登場したときは奇異に受け止められたと記憶している。芸人さんで言うところの一発芸みたいなもので、珍しい、面白いけど定番にはならないだろうと。ところが電車好きはもちろん、ふだん“電車に乗っている人々”の興味も引いて遊びだした。
爆発的な人気の転機はタモリさんの『笑っていいとも!』で紹介されたことだったと思う。タモリさんが楽しそうに遊び、鉄道好きが世間に広く知られた。その後、鉄道旅をテーマとしたコミックが登場し、さいたま市に鉄道博物館が開業するなど鉄道趣味が広く厚く定着していく。そのきっかけのひとつが『電車でGO!』だったと思う。
ゲームセンターでは続編が登場し、家庭用ゲーム機やPCに移植された。運転できる路線も増え、専用のコントローラーも発売された。運転が苦手でも遊びたい。しかしゲームセンターで遊ぶと、上達するまでに財布が空っぽになってしまう。家でじっくり遊びたい。そんな電車好きに支持されて、シリーズタイトルは携帯版、スマホ版含めて20タイトル以上になった。しかし、2004年に発売された『電車でGO! FINAL』でピリオドを打つ。
2010年に山手線命名100周年を記念して『電車でGO! 特別編 復活!昭和の山手線』がニンテンドーDS用に登場した。これは言わばリバイバル運転のようなモノだった。じつはこの作品から発売元がスクウェア・エニックスになった。開発元のタイトーがスクウェア・エニックスグループになり、家庭用ゲーム部門はスクウェア・エニックスに統一されたからだ。『電車でGO! FINAL』はタイトーの家庭用ゲーム機ソフトとしてのファイナル版で、『電車でGO! 特別編 復活!昭和の山手線』はスクウェア・エニックスのシリーズ第1作だった。