文春オンライン

娘から「警察官もパパのこと女性やと思うんやな」と…結婚10年目で“女性になりたい”と打ち明けたトランスジェンダー当事者(56)が語る、家族へのカミングアウト

今西千尋さんインタビュー#1

genre : ライフ, 社会

note

離婚から9年後、養子縁組を結んだ理由

――お2人は離婚から9年後、養子縁組を結ばれました。その経緯を教えていただけますか。

今西 離婚した時の一番のネックは、子どもたちのことでした。男として子どもを作った責任を最後まで全うしたいという気持ちがあったので、金銭的にも精神的にもできる限りのことはしたいと思っていて。

性別適合手術を受ける前の千尋さん (本人提供)

 それに、博子さんと離婚したからといって、家族としての関係が終了するというわけではなかったんです。夫婦としての関係ではないものの、お互いに支え合っていたし、必要な存在でした。もちろんカミングアウトした当初は、お互いに距離もできてしまったし、博子さんも私との関係をすごく悩んだと思います。

ADVERTISEMENT

 でも、離婚後、何年もかけて少しずつお互いを理解していく中で、やっぱりこれからもお互いに支え合いたいと思って。それで養子縁組を結ぶことに決めました。

 

――性別を変えてからお子さん達との関係はいかがでしたか。

今西 娘が小学校6年生の時に、たまたま一緒に警察署に忘れ物を取りに行く機会があって。警察官が、「お母様。身分証明書はありますか?」って聞いてきたんです。そしたら娘が急に笑い出して、「警察官もお父さんのこと、女性やと思うんやな」って。それまでずっと口を聞いてくれなかったんですが、それ以降は心を開いてくれて。

 息子も今では「お父さんの生き方はかっこいいよ」って言ってくれます。受け入れてくれるのは嬉しいですね。

――離婚はされましたが、家族としての形は変わらないと。

今西 そうですね。博子さんや子どもたちが私を受け入れてくれたので、家族としてまた歩んでいくことになりました。だから本当に感謝しています。途中からお父さんが女性になるなんてなかなか受け入れられないことですよ。もう二度と会いたくないと言われてもおかしくないですから。

 今こうやって家族として暮らして、博子さんとも夫婦の時と変わらずに支え合って生きていられるのは、本当に稀なケースだと思いますね。

写真=山元茂樹/文藝春秋

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

娘から「警察官もパパのこと女性やと思うんやな」と…結婚10年目で“女性になりたい”と打ち明けたトランスジェンダー当事者(56)が語る、家族へのカミングアウト

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事