一度は訪れたことがある人も多いであろう「火葬場」。しかし、火葬場では日々どんなことが行われているのか、そもそも火葬場とはどんな場所なのか知らない人も多いのではないだろうか?
そんな火葬場の“リアル”を発信し続けているのが、過去に約1万人ものご遺体を見送ってきた元火葬場職員・下駄華緒さん。2022年10月7日には、火葬場での体験談を綴ったコミックエッセイ『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(竹書房)の第2弾を刊行した。今回はそんな下駄さんに、火葬現場の実態を詳しく聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)
※プライバシー保護の関係上、本記事に出てくるエピソードは事実に基づいたうえで一部改変しています。
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年間約140万人の方が亡くなっていて、その99.99%以上が火葬
――まずは、日本における火葬の実情を教えてください。
下駄華緒さん(以下、下駄) 世界を見ると、宗教上の理由から土葬が一般的な国も多いんです。でも日本の場合、一部土葬の習慣が根付いている地域はあるものの、今は99.99%以上が火葬ですね。
日本では現在、年間約140万人の方が亡くなっています。1日に換算すると約3800人。でも、病院や火葬場以外でたまたまご遺体を目にしたことがある人はほとんどいないですよね。それは、火葬場が機能しているから、というのも理由のひとつ。
僕は、火葬場は電気や水道のように“インフラ”に近いものだと考えていて。日本国内で亡くなった方なら、どんな方でも別け隔てなく公平に火葬するのが、火葬場の使命だと思っています。
――どんな人でも別け隔てなく?
下駄 例えば、火葬場では身元不明のご遺体を火葬することもあるんです。その場合は本名がわからないので、僕が勤めていた火葬場では、その方が生前名乗っていた“自称”やあだ名で火葬していました。
生前の呼び名すらわからない場合は数字で管理していて、「三十五郎」のように数字の最後に「郎」をつけていましたね。