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赤ちゃんの火葬が難しい理由

――焼くのが難しい体型はあるのでしょうか。

下駄 体型とは少し違うかもしれませんが、赤ちゃんの火葬は難しいですね……。出産後に亡くなった場合はもちろん、妊娠12週以降に流産・死産した赤ちゃんも火葬をする必要があります。その場合、手のひらより小さいこともあるんです。

 小さいから早く簡単に火葬できるんじゃないか、と思われるかもしれません。でも、どんなに小さい赤ちゃんでも、大人と同じサイズの炉で焼くことがほとんどです。小型の炉を設置している火葬場は少ないですから。

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 そんな炉で大人と同じように火葬してしまうと、一気に焼きすぎて骨が残らないことがあったり、火の勢いで体が飛ばされてしまったりするんです。だから、成人の10分の1くらいのサイズの子でも、30分くらいかけてゆっくり火をかける必要があります。

 ほかに難しい例をあげると、水死の方の火葬もとても大変です。

――なぜですか?

下駄 体中に大量の水を含んでいるから、ご遺体に火がつくまで時間がかかります。いざ火がついても、骨に水が染み込んでいるから焼けるまで時間がかかる。

 でも火力を強めると、炉の中の酸素量が少なくなって大量の煙が出やすい状態になってしまう。とはいえ、そのまま焼き続けると時間がかかってしまうから、煙がでないギリギリのラインで火力を調整する必要があって。とにかく、水死のご遺体は火加減がものすごく難しいんですよ。

感染症で亡くなったご遺体から感染するリスク

――マンガの第1弾には、感染症で亡くなった方のご遺体を火葬するエピソードもありました。感染症の方の火葬も難しいのでしょうか。

下駄 確かに、お亡くなりになったあとでも、体の中に溜まっていたガスが何らかの刺激で排出されて、それが原因で感染するリスクはあります。でも、かなり稀な例ですね。実際にはご遺体から感染するリスクよりも、ご遺族から感染するリスクの方が高いと思っています。

――ご遺族から感染するリスク?

下駄 例えば、新型コロナウイルスが流行し始めたばかりのとき、ご遺族には参列を控えてもらって火葬をしていました。当時はまだわからないことの多い未知のウイルスだったから、というのもご遺族を呼ばなかった理由のひとつです。

 でも、それよりも懸念していたのが、生前ご遺体との接触機会が多かったであろうご遺族が感染源となって、ウイルスが広がってしまうことだったんです。

撮影=末永裕樹/文藝春秋