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信仰していた宗教によっては、ご遺族に「喉仏」を見せないことも

――身元がわかろうとわかるまいと、平等に名前をつけて火葬するんですね。では、宗教によって火葬の仕方に違いはありますか?

下駄 焼き方自体に違いはありません。時々「宗教の関係上、骨が灰になるまで焼いて欲しい」とお願いされることがあるのですが、灰になるまで焼くのは通常の何倍も時間がかかるんです。火葬炉にも負荷がかかってしまうので、申し訳ないけどそれはお断りしていますね。

 ただ、火葬後のご遺骨を細かく砕いてくれる業者があるので、灰のようにしたい方はそういったところを利用するといいと思います。

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 ちなみに、お骨上げの仕方は宗教によって少し違うかもしれません。例えば、ご本人が神道やキリスト教といった仏教以外の宗教を信仰していた場合、ご遺族の方々に「喉仏」をお見せしないこともあります。「喉仏」と呼ばれる理由は、骨の形が「仏様が座っている姿」に似ていることが由来ですから。

きれいなご遺骨になるまでに1時間~1時間半程度は必要

――確かに、「仏様」は仏教ですもんね。「喉仏」を見せるかどうかは、どう判断していたのですか?

下駄 僕が働いていたときは、ご遺族の意向を葬儀屋さんに確認していました。ご本人は仏教以外の宗教を信仰していたけど、ご遺族は仏教徒が多い、という場合もありますし。宗教に限らず、ご遺体の情報やご遺族の希望は火葬のたびに葬儀屋さんにヒアリングしていましたね。

――実際の火葬業務はどのように行っているのでしょうか。

下駄 ご遺体の入った棺を火葬炉に入れて、扉を閉めたらスイッチを押して火をつけます。そこから15分くらいで棺が焼け落ちるので、デレッキと呼ばれる鉄製の長い棒で棺を避けながら、ご遺体を棺の外に出します。

 その後、ご遺骨がきれいな状態になるよう、炉の様子を見ながら時々デレッキでご遺体を整えていくんですよ。体の大きさなどにもよりますが、きれいなご遺骨になるまでに1時間~1時間半程度は必要ですね。

――マンガの中では火葬中のにおいに悶絶する場面がありました。

下駄 実は、火葬自体のにおいはほぼありません。火葬炉の天井に空気を吸い上げる機械がついていて、それで炉の中のにおいを吸収するから。

 ただ、ご遺体を整えるときにデレッキに体液がついてしまうと、炉からデレッキを引き上げるとき、体液のにおいに悶絶してしまうことがあります。マンガで描かれているのも、その体験です。でも、においが気になるのはその時くらい。火葬場では、“暑さ”のほうがツラいと思います。