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 火葬中は、炉の中はもちろん、炉の裏側もものすごく暑くて。新しい火葬場だとクーラーが設置されているところもあるんですが、古くからある火葬場だと、いまだに冷房設備がないところも多いんですよ。そうなると、真夏の火葬は地獄のように暑い……。例えると、猛暑日にキャンプファイヤーをするイメージですかね。

デレッキ作業時に伴うやけどの危険

――過酷ですね……。

下駄 だから屋内に、「熱中症に気をつけましょう」って張り紙をしている火葬場が多いんです。職員も保冷剤を使ったり、塩飴を舐めたり、できるだけ頻繁に火葬担当を交代したりして気をつけてはいるんですけど、それでも倒れる人はいます。もし火葬中の職員が倒れた場合、倒れた本人だけでなく、その周りにいる人も危ないんです。

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――なぜ周りの人も危ないのでしょう?

下駄 先ほどもお話ししたように、火葬中はデレッキという長い棒を持って作業にあたります。高熱の炉の中に直接入れるデレッキの先は、とんでもなく熱い。そのデレッキを持ったまま倒れてしまうと、周りの人に当たってやけどをさせてしまう可能性もあるんです。

 ちなみに、火葬場職員にやけどはつきもの。火葬中に炉の中の様子を小窓から覗くと、火の粉が飛んでくるんですよ。やけど防止のために長袖のシャツを着るのですが、火の粉ですぐに穴だらけになってしまう。

――デレッキ作業は危険も伴うのですね。

下駄 最近では、デレッキ作業が不要な全自動の火葬炉も出てきているんです。それを使えば、やけどや熱中症のリスクも少しは減ります。

 でも、すごく高額だから導入している火葬場はまだまだ少数。誰にとっても公平な火葬を行うためには、職員が安心して働ける環境作りも必要だと思うので、少しずつ広まるといいですね。

体の大きい人や筋肉量が多い人は火葬時間が長くなる

――先ほど、体の大きさなどによって火葬の時間が変わるとおっしゃっていましたよね。その部分も詳しく教えていただけますか。

下駄 体の大きい人は、火葬に時間がかかることが多いです。でも、焼く部分が多いから時間がかかるわけではない。燃える部分が体の小さな人よりも多いから、想定以上に炉内の酸素量が減ってしまって、黒煙が大量に出てしまうことがあるんですよ。

 そうすると、火葬場近隣の住民にもご迷惑がかかってしまう。だから、黒煙を出さないように通常よりバーナーの火を弱めて慎重に焼く必要がある。その結果、火葬時間が長くなりやすいんです。

 あとは、筋肉量の多い若い人も火葬時間が長くなることがありますね。筋肉は燃えづらいので。お年を召した方でも、普段からスポーツをしていて筋肉量が多い場合は、時間がかかることもありますよ。