「知りたい」と思っている人には、きちんと事実を伝えたほうがいい。ただ、なんでもかんでも真実を言うべきではないとも思っています。特に、どんなにひどい火葬場でも、地域が特定できるような情報は出さないように気をつけています。
だから直接名前を晒して叩くのではなくて、“正しいやり方”や“理想のやり方”を発信して、それが広まる中で「これができていない火葬場は時代遅れだ」と火葬場自体が気付き、改善されていくのがいいですね。
――飲食店の口コミのように、火葬場の良し悪しを知りたい人も多いのでは?
下駄 気持ちはわかります。でも、火葬場は好きに選ぶのではなく、地域の火葬場を利用することが一般的です。もし自分の住む地域の火葬場の悪い噂を聞いてしまっても、「じゃあ別の場所で」というのが難しい地域の方もいらっしゃいます。
知りたいと思う人へ火葬場の真実を届けることに意味がある
――YouTubeでも、「ミスを防ぐには?」とか、「火葬の手順」といった話をされていますよね。初期に比べて、真面目な話題が多くなった印象です。
下駄 本当にやりたかったのは、今の状態なんですよ。ただ、最初から真面目な話ばかりしていても、誰も興味を持ってくれないと思ったんですよね。
だからYouTubeを始めた当初は、怖い話やグロい話を求めている人たちに興味を持ってもらえるようにしていました。そこから少しずつ、真面目な話を織り交ぜていった感じですね。
――話す内容を変えたことで、何か変化はありましたか。
下駄 怖い話やグロい話を減らしてからは「期待はずれだった」と離れていく人もたくさんいました。でも、僕の動画を見て、「火葬場は日本人にとってこんなに身近なのに、全然知らない」と気付いて、「今度、自分が火葬に参列した時のために」「いつか自分がそうなった時のために」と見続けてくれた人もいます。
YouTubeで真面目な話をしても、再生回数は1本あたりせいぜい4000回程度。怖い話をすれば、1本で何十万回と再生されることはわかっています。もちろん、広告収入も全然違う。それでも、知りたいと思う人へ真実を届けることに意味があると思うから、今のスタイルを変えるつもりはありません。
当たり前なんですけど、火葬されるのは人生で一度きり。誰もが平等に穏やかな最期を迎えられるよう、僕の発信が、閉じられて時代遅れだった火葬場業界から脱却するきっかけになれば嬉しいですね。
撮影=末永裕樹/文藝春秋