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事実上のワンオペ育児を強いられている「隠れシングルマザー」

 ある時、夫がスマホのソーシャルゲームの課金で百数十万円ものお金を使い込んでしまったことが発覚した。全額を千夏さんが返済することになったのだが、夫は「妻が風俗で働いていることに耐えられなくなって使ってしまった」と言い訳をしている。

©️iStock.com

「私がデリヘルで働いているのは、夫の稼ぎが少なくて、それだけでは生活できないからです。

 それなのに、働いていることを責められるのは納得がいきません。夫に対しては、もはや愛情もなければ情もないので、正直離婚したいのですが、『離婚したら、風俗で働いていることをきょうだい親戚にバラすぞ』と脅されています。

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 母親が風俗で働いている場合、離婚調停で不利になって、娘の親権も取られてしまうかもしれないと思うと、なかなか離婚には踏み切れません」

 千夏さんのように、夫婦の関係不和や家庭内の問題によって、事実上のワンオペ育児を強いられている「隠れシングルマザー」は、S市内のデリヘルの待機部屋ではごく日常的に出会う存在である。

 児童扶養手当を含め、シングルマザーに関する支援制度やサービスは、夫と死別・離婚した女性でないと利用できないことが多い。夫と離婚できないがゆえに、あるいは離婚するまでのつなぎの仕事として、デリヘルを選ぶ女性は少なくない。(#2を読む)

 本文の中で登場する市町村の規模は次の通り。

・S市;人口約80万人。政令指定都市で、S県の県庁所在地。

 

・A町:人口約1万4000人。S市の隣町。企業や電力会社から得た税収を背景に、子育て支援を充実させている。

 

・B市:人口約9万6000人。S市からバイパスを使い車で20分程度。