近年、経済的困窮におかれたシングルマザーの中で、性風俗店で働く人たちが増えているという。特に、首都圏に比べて賃金や働き口の面で厳しく、また行政の公的サービスも十分でないという地方都市においては、こうした「性風俗シングルマザー」はどのように仕事と育児をこなし、貧困から脱出しようともがいているのか。
その実態に迫った坂爪真吾氏の『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(集英社新書)より、一部を抜粋して転載する(プライバシー保護の関係上、本記事の事例は事実に基づいたうえで一部内容を変更し、都市名、人名などは仮名にしています)。(全2回の2回目/前編を読む)
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19歳で妊娠・結婚、そして夫の借金
杉本玲美さんは、現在32歳。出身はS市で、現在は結婚してS市に隣接するA町に住んでいる。
子どもは11歳の長女(小6)、6歳の長男(小1)、4歳の次男(年中組)の3人。夫(37歳)・義父(無職)・義母(現役で働いている)と同居している。
高校卒業後、S市内の飲食店に勤務していた際に、現在の夫(当時24歳)と出会った。
交際を始めてから間もなく、妊娠が発覚。玲美さんはまだ19歳だった。
妊娠を報告したところ、「じゃあ、結婚しよっか」と言われ、そのままできちゃった婚をすることに。
妊娠が発覚した後、飲食店は退職した。入籍後はA町にある夫の実家に入り、家の近くのスーパーでレジのパートを始めて、臨月まで働いた。
第一子(長女)を出産後、2カ月で別の店のレジに勤め始めた。産後すぐに働き始めた理由は、夫に借金があることが判明したからだ。