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 僕がいまあなたに伝えたいのはこういうことだ。生きていれば浮き沈みがある。僕もまたいつかどこかでつまずくだろう。失敗からは逃れられない。その代わりどんな状況でも必ずひっくり返せる。僕は特別な人間じゃない。元はおちこぼれだ。だからあなたもできる。できないほうがおかしい。やるか、やらないか。それだけだ。

 もし学校に馴染めなくても、就職でつまずいても、仕事で失敗しても大丈夫。心配すんな。最後は全部上手くいく。

直感で動くヒカルが経験したいちばん強烈な衝動

 僕は自分の直感には素直に従うと決めている。直感で動いて後悔したことはない。直感は正しい。

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 ここで言う直感とは、2つの選択肢で悩んだとき「エイヤ!」と決めるようなたぐいのものではない。選択なんてない。カミナリに打たれたような衝撃とともに「これをやりたい!」と頭と体が勝手に動き出すような強い衝動のことだ。

 そしてそれはえてしてなんの前触れも、なんの脈絡もなく全身を駆けめぐる。

 僕が経験したいちばん強烈でいちばん突拍子もなかった衝動。それはいまでもよく覚えている。ユーチューバーをはじめるまえ、情報商材ビジネスに取り組んでいたころの話だ。

 ある日、ふいに野球マンガの『ドカベン』を読みたくなった。『ドカベン』がどんなマンガかはなんとなく知っていたものの、ちゃんと読んだことはない。それなのに突然だ。ドカベン、ドカベン、ドカベン。とにかく『ドカベン』を読みたい。いますぐ読みたい。仕事もまったく手につかなくなってしまった。

 1巻だけじゃダメだ。全巻だ。全巻を一気読みしたい。でも『ドカベン』は48巻もある。そのころ僕が住んでいたのは兵庫の田舎町だ。近所に『ドカベン』がぜんぶ揃っていそうな大きな書店はない。当時はまだ電子書籍も普及していなかった。Amazonでポチっても届くのは2日後。そんなに待てない。いますぐ読みたい。

 それで僕はどうしたか。大型書店のある神戸まで車を飛ばした。そして無事に全48巻を購入。そこから家にトンボ返りして3日かけて読破した。読破して大きく息をついた。すげえな、このマンガ。

 なにがすごかったのか。登場人物たちのキャラの濃さだ。たとえば、ボールを手離す瞬間まで右手で投げるのか左手で投げるのかわからない投法をするピッチャー。または、バットをユニフォームのズボンのベルト通しに入れて構え、居合斬りのようにボールを打ち返すバッター。あげくには、バットを振ったその風圧だけでボールに触れずに打球を放ってしまう怪力の持ち主までいる。ムチャクチャだ。みんな濃い。濃すぎだ。クセがありすぎる。でもそれがいい。いちど読んだら忘れられない。