好感度は無関係。その代わりあらゆるすべてのことをエンターテインメントに変えてみせるユーチューバー。それが僕のポジションだ。そしてそのポジションはがら空きだった。チャンスしかない。
実写動画チャンネル「ヒカル(Hikaru)」の初期に力を入れたのは検証企画だった。やったらおもしろそう、やったらどうなるか知りたい、でも自分にはできない。そんな視聴者の欲求に応える動画を次々にアップしていった。
当たりつき自販機を売り切れになるまで買うとけっきょく何回当たるのか。駄菓子屋のお菓子を全種類買い、それぞれどんな味なのかぜんぶ食べ尽くしてみる。1回1000円の高額ガチャガチャを品切れになるまでやり続けるとどうなるのか。賞金100万円の現金争奪じゃんけん大会をやるとどれだけ白熱するのか――。
どの動画もスマッシュヒットした。おもしろいようにバズった。あっという間に「ヒカル(Hikaru)」の登録者数は増え、チャンネル開設から9か月で100万人到達の快挙を遂げた。これは当時の日本のYouTubeでの最速記録だ。
で、お気づきのとおり、どれも金に物を言わせた企画である。下品だ、はしたない、そんな非難もあった。もちろんぜんぜん気にならない。むしろ望むところだった。
ヒカルのスタンスを世に広く知らしめた1本の動画
お金がないとできないこと。勇気がないとできないこと。つまり普通の人は手出ししないことを僕が代わりにやる。そうして素朴な疑問を解き明かす。それがヒカルのエンターテインメントなのだ。
その僕のスタンスを世に広く知らしめた1本の動画がある。チャンネル登録者が100万人を突破して間もないころにアップした動画だ。
それは祭りの露店のくじに本当にアタリが入っているのか検証するというもの。僕は札束を財布に入れて露店のくじ引き屋に出向いた。A賞(1等)はニンテンドースイッチの本体。それが当たるまでひたすらくじを引く。でもぜんぜん当たらない。結局、15万円使ったがかすりもしなかった。B賞(ニンテンドースイッチのソフトなど)すら出なかった。明らかにおかしい。
そのことを店主に問いただすと、アタリくじが入ってるかどうかは自分もわからないと言う。あきれた。ふざけた言い逃れだ。きっとアタリくじなどもとから存在しない。店主と口論になった。納得いく回答はひとつもなかった。もはやこれは詐欺だ。子どもたちを騙して小遣いをむしり取っているだけだ。悪質すぎる。ぶっちゃけ僕はもとから露店のくじ引き屋にうさん臭さを感じていた。いかがわしい印象を持っていた。で、実態は残念ながらそのとおりだった。