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――たしかに、眞栄田さんがコメディリリーフの役目を一手に担っている印象があります。

渡辺 ですよね。なんかひとりでハアハア言ってるところが、必死な大型犬みたいで(笑)。あの感じが、長澤さんと鈴木さんの安定感の間ですごくよく映える。あまり見たことのない画面で、これは面白いんじゃないかと。

 斎藤正一役の鈴木亮平さんは、私が抱いていた「こういう方だろうな」というイメージそのまま。本当にクレバーで誠実で、「お人柄力」が素晴らしい。斎藤は恵那の元カレで、彼女がずっと想い続ける反面、宿敵のような存在になっていくんですが、どの人だったら説得力を持たせられるだろうかと、佐野さんとずっと模索していたところ、鈴木亮平さんが思い浮かんだときに「あ、いける!」と直感しました。

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「政治家にも可愛がられる報道部のエース」という設定だけなら簡単に思いつくのですが、恵那にそれだけ惚れさせて、苦しませるというところの信憑性を出せる役者さんとなると、なかなか難しい。鈴木さんなら間違いなく表現してくださるだろうと思いました。

©文藝春秋

あらゆる階層の人を、等しい価値として描いてほしい

――大根仁さんの映像作りはいかがですか? 

渡辺 ディテールに対するこだわりがとても強い方です。打ち合わせをしていると、想像以上に細かくいろんなことを確認してくださいます。私と佐野さんが、大根さんに演出をお願いしようと思ったいちばん大きな理由は、どんな立場、どんな属性の人に対しても「把握する目」をお持ちだというところでした。

 このドラマには、恵那・拓朗・斎藤のようにマスコミという華やかな場所で活躍している人もいれば、冤罪被害に遭う松本さん(片岡正二郎)のように陽の当たらないところで暮らしている人も出てくる。そういったありとあらゆる階層の人たちを、等しく同じ価値として描いてほしいと私は思っていて。

 被害者だから、加害者だから、政治家だから、マスコミの人だから、市井の人だから……などという雑な割り振りで、記号的に描いてほしくない。どの人物にも、きちんと奥行きとか魅力とか、「実在感」を作ってくれる監督がいいと、ずっと思っていました。

 大根さんはまさにそれができる方。お年寄りも若い人も、リッチな人も貧しい人も、社会の中で虐げられている人たちのことも、愛情と観察力とを持って、すごくよく見ていらっしゃいます。