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《遺書公開》「どこか誰ひとりぼくを見てない場所に行きたい」16歳少年を自死に追い込んだ「長崎・キリスト教学校の闇」

『いじめの聖域』 #1

2022/11/03

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 政治, 教育

 2017年4月、長崎海星高校2年の男子生徒・福浦勇斗(名字のみ仮名)くんが自殺した。現場となった公園では、4枚の遺書が見つかった。後日、いじめ加害者の実名が記されたノートも発見。第三者委員会は、いじめと自殺の因果関係を認めたのだが……。

 彼の死を偽装してまで「いじめ」を隠そうとする学校側と両親の戦いの記録を綴った『いじめの聖域〜キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録〜』(11月9日発売)より、著者である石川陽一氏のまえがきを紹介。両親は近く学校側を提訴し、記者会見を開く意向である。

 2人が愛した勇斗くんは、なぜその命を絶たねばならなかったのか?(全2回の1回目/後編を読む)

幼少期の勇斗くん(写真:両親提供)

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1人の男子生徒が自らの命を絶った

 長崎市は“坂の街”と呼ばれる。平地を取り囲むように山々が連なっている特徴的な地形のためで、すり鉢状の形をした底面の部分に市街地が栄える。住宅は階段教室の座席のように段々とその側面に沿って並び、坂を伴った石畳の狭い小道が迷路のように入り組む。その様が旅行者の目にはしばしば異様に映り、鎖国時代に貿易の窓口だった出島のイメージと相まって異国情緒を想起させる。

 急坂が至る所にあるためか、街中で自転車を見掛けることは滅多にない。市民にとって、自動車の他のメジャーな交通手段といえば、中心部の道路に張り巡らされた路面電車である。最大の繁華街である思案橋から乗り換えを含めて10分も揺られると、世界遺産に登録された軍艦島の見学クルーズ船が出港する大浦海岸通に着く。海に背を向けて山の方に歩き出せば、これも世界遺産の旧グラバー住宅や大浦天主堂が立ち並ぶ、市内でも有数の観光スポットに向かえる。

 その手前の東山手町を貫くように伸びる長い急坂は、かつて一帯が外国人の居留地だった影響で「オランダ坂」と名付けられ、観光名所の一つに数えられる。ここを登り切った先に姿を現すのが、中高一貫の私立海星学園である。

長崎県・私立海星学園 ©杉山拓也/文藝春秋

 学園の創設は1892年。カトリック・マリア会を母体とし、校訓に「神愛・人間愛」を掲げる。「己の如く隣人を愛せよ」というイエス・キリストの教えが基になっているのは言うまでもない。甲子園常連の野球部を筆頭に部活動が盛んで、進学コースからは有名大学の合格者も多く、伝統ある名門として県内外にその名を知られる。

 2017年4月20日、この学園に通う1人の男子生徒が自らの命を絶った。福浦勇斗(名字のみ仮名)くん16歳。高等部の2年生で、約3週間前に進級したばかりだった。