「夫は退院した時に高級フカヒレを食べさせてくれました」
──ご家族には、いつがんのことをお話しされたんですか?
家族には、がんと診断されてすぐに言いました。乳がんの手術をした姉が完治した、というのが家族の頭の中にあるので、母も子どもたちも「おばちゃんが大丈夫だったから大丈夫」という感じで受け止めたみたいです。夫(弘兼憲史氏)には「取っちゃえばいいじゃん。お義姉さん大丈夫だったから、大丈夫だよ」って気楽に言われました。
夫は非常に合理的な人なので、手術の時も「家族が誰か一人側にいれば、連絡が取れるから」と地方講演の仕事に出かけてましたね。そのお詫びか、無事退院した時は、車で迎えにきてくれて「元気つけろ」と高級フカヒレを食べさせてくれました。
──高級フカヒレを。優しいご主人ですね。
入院中1回しかお見舞いに来ませんでしたけど、って言いましたよね(笑)。
でも、今、私の生きがいになっている愛犬のリンコをクリスマスにプレゼントしてくれたのは夫でした。まだホルモン療法を続けている時で、体調が悪かったんですが、犬を飼い始めて朝晩散歩に連れて行くようになってから、早寝早起きと適度な運動が習慣づいて、体調がよくなったんですよ。仕事も普通にこなせるようになりましたし、愛しいリンコを撫でるだけでストレスが癒されます。今は、リンコのために長生きしようと思っています。
がんは「切ったら終わり」じゃない
──仕事と治療を続けていく中で、何が一番大変でしたか。
一番困ったのは予定が立てられなかったことです。がんは「切ったら終わり」じゃないんですよね。私の場合は幸い、薬が効くタイプのがんだったので、放射線治療の後、5年間処方された薬を飲めば、まず再発の心配はないと診断されました。でも薬が有効じゃない場合は、別の治療を受けなくてはいけなかったわけで、そうなると仕事復帰の目安も変わってきます。たとえば骨折だったら、「完治まで何週間」というように、どのくらいでどういう状態になるのか予測ができるんですけど、それができないことで、仕事の見通しが立てられず、困りました。