ロシア依存という弱点を突かれ、さらにこの冬には、ガスの「配給」という事態さえも現実味を帯びるドイツに、専門家らの見方は厳しい。
「事態は深刻です。これはドイツのエネルギー政策と、外交政策の『崩壊』と言っていい」
ドイツのエネルギーを専門とするアナリストで大学教授のトーマス・オドネル氏は、強い批判を繰り広げた。
ドイツのエネルギー政策と外交政策の『崩壊』
2010年9月、ドイツは政策文書に「Energiewende(エネルギー移行)」という文字を明記した。これは、気候変動などの進行を受け、CO2を出さない再生可能エネルギーへの移行を打ち出したものだが、その約半年後に福島原発の事故が発生し、ドイツは再生可能エネルギーへの移行と、脱原発を同時に進めようとした。
「これは異常なことです。というのもアメリカであれば、CO2削減に資することは全部やりましょうということで、石炭より、CO2の少ない天然ガスの発電をしたり、CO2を出さない原発を活用しようとするのに対し、ドイツは100%再生可能エネルギーを目指す『原理主義』のようなアプローチだったのです」(オドネル氏)
もし仮に、いきなり再生可能エネルギー100%に移行する芸当が可能なのであれば問題ないかもしれないが、現実には、脱原発を追求した代わりにCO2を出す石炭火力からの脱却が遅れ、さらに外交政策として、天然ガスのロシア依存が顕著になってしまった。
というのも、出力が安定しない再生可能エネルギーでは、需要と供給をマッチさせるため、現状ではまだ、起動に小回りが利く天然ガスの火力発電で補完して出力を安定させることが多くの場合マストとなっている。つまり、再エネ100%を目指すまでの「つなぎ」のエネルギー源として、天然ガスは欠かせない存在だったのである(これに加えて、ドイツはガスを熱源としても利用している)。
その弱点が、ノルドストリームというロシア依存に顕在化していたのであり、オドネル氏が、エネルギー政策だけでなく、外交政策の「崩壊」と呼ぶ理由である。