ダイエットは万人の願い。食べるだけで痩せられる――そんな夢のような食べ物があったとしたら……。

 国内では未承認の成分を含む健康食品をインターネット上で販売した医薬品医療機器法違反の疑いで、10月19日、ベトナム国籍のリ・ティ・キム・ジャン容疑者(31)が逮捕された。10月29日には、その健康食品1245個を販売目的で貯蔵していた疑いで再逮捕もされている。警察の調べに対し容疑者は「そのような成分が入っているとは知りませんでした」と否認しているという。全国紙社会部記者が解説する。

逮捕されたリ・ティ・キム・ジャン容疑者のSNS

アメリカで54人が死亡…“痩せるゼリー”に含まれる「シブトラミン」

「ベトナム製『Detoxeret(デトキシレット)ゼリー』という健康食品を“痩せるゼリー”と謳って販売していたのがジャン容疑者です。商品にはシブトラミンという成分が含まれているのですが、これは厚労省の未承認成分。シブトラミンには食欲を抑制する作用があるとされており、かつてアメリカでは肥満治療に用いられていたことがあります。ですが、血圧の上昇や心拍数の増加という副作用も強く、アメリカで54人が死亡する深刻な健康被害が出たこともあり、現在は同国でも販売中止になっているくらいの危険な成分と言われています」

ADVERTISEMENT

痩せる効果を謳うベトナム製ゼリー

 ジャン容疑者は、ダイエットへの切なる願いに付け込んで、未承認成分入りのゼリーをばら撒いてきたという。容疑者にコンタクトを取った人物はこう語る。

“痩せるゼリー”の宣伝方法…日本名でFacebookに登録、フリマアプリも

「わざわざ日本名でFacebookに登録し、痩せるゼリーの宣伝に熱を上げていました。メルカリやラクマといったフリマアプリを使って販売していたようで、昨年12月から今年の8月までで約50件の依頼を受け、33万円ほどを売り上げたそうです。もっと手広く商売にしたかったのか、一緒に痩せるゼリーを販売する仲間も募っていましたよ。私も興味があって連絡をとったら、すんなり販売方法を教えてくれました」

容疑者のFacebook
容疑者のFacebook

 痩せるゼリーはそもそもベトナム製。日本で流通させるには輸入の必要があり、国が未認可の薬効成分など税関で弾かれそうなものだが、そこにはカラクリがあると、前出の社会部記者が説明する。

未承認成分の検査は行われていなかった

「ベトナムの製造元企業が、日本の輸入会社に卸すという形で国内に入ってきたようです。分かっているだけでも今年の4月に1274kg、約1万箱に上る痩せるゼリーが輸入されています。まさかゼリーに未承認成分のシブトラミンが含有されているはずがないという理由で、他の禁止成分なら行われるはずの特別な検査はされておらず、真っ当なルートで輸入されています。そこからジャン容疑者のような個人の手に渡り、インターネット上などでまた個人に販売するというルートが出来上がったとみられています」