会社に辞意を伝えた翌日に、妻の妊娠が発覚
私自身のマイナー志向、会社の経済の論理、外部のディレクターの眩しい活躍……。様々な要素が絡み合って、もう辞めようと決心しました。あとはタイミングでした。新番組が既に進行していたのと、短い期間とは言えたくさんの方にお世話になったので、気持ちを伝える時間も必要と考えました。ちなみに妻は「あんたの好きにしたらええわ」(香川県出身の讃岐弁です)と大らかなものでした。
そうこうするうちに、新番組が視聴率不振で2クール(6か月)を待たずして8月で打ち切り、ということが決まりました。もうこのタイミングしかない、と思い、そのことが決まった6月末に部長に辞意を伝えました。6月末は、ちょうど会社の人事異動のタイミングでもあったからです。番組が終わる8月の半ばまでは仕事をまっとうし、退社の日は8月31日に決まりました。
劇的だったのは、会社に辞意を伝えた翌日に、妻から「妊娠したで」と言われたことです。あまりのタイミングに、喜びととまどいが相半ばしました。
多くの人に「ドキュメンタリーは食べていくのが大変だぞ」と言われていたのですが、夫婦共働き(当時妻は広告デザイン事務所に勤めていました)なら何とかなるだろう、くらいに軽く考えていたのです。ですから、妻の妊娠が先にわかっていれば、躊躇したかもしれません。
でもその順番だったので、退社の決断も間違っていないのだろう、と思い直しました。ありがたいことに熱心に慰留してくれる人もいましたが、気持ちは変わりませんでした。私は誕生日が9月なのですが、30歳になる2週間前の1999年8月31日に、フジテレビを辞めました。