1ページ目から読む
2/3ページ目

 ところが、計画は農業委員会で充分に議論された形跡はない。5月29日付の議事録には〈農業収入の増大を図っていくとのこと〉などと記され、〈異議なし〉で購入を許可されている。農業委員会の委員長は㓛刀氏の父親だ。農水省農地政策課の担当者が語る。

「申請内容が明らかに間違えていたり、誤っていたりすれば、重大な瑕疵があったとして、許可が無効になる可能性がある。不正な手段で農地法第三条一項の許可を受けた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます」

土地を「リニア代替地」として申請。その意図は?

 さらに――。

ADVERTISEMENT

 㓛刀氏は、購入から半年足らずの11月27日付で、この土地を「リニア代替地」として申請し、12月6日に富士川町長から登録通知を受けている。このリニア代替地とは何か。

「リニア工事に伴って立ち退く住民が、町内で代わりの土地を探せるようにする制度です。代替地として提供しても構わない土地について、所有者から申請を受け、町として登録しています」(富士川町土木整備課の担当者)

 代替地登録制度は14年から開始され、広報されてきた。地元不動産業者はこう説明する。

「農地のままだと坪単価2000~3000円。しかし、立ち退きを余儀なくされた住民などから代替地の希望者が現れ、宅地として転用できれば坪単価は5万~6万円ほどに跳ね上がる。200坪であれば、売買価格は1000万円を下らないでしょう」

 小誌記者が10月中旬、現地を訪ねたところ、苗木のようなものが4本植えられている程度だった。つまり、㓛刀氏は違法の疑いもある“虚偽”の営農計画で農地を格安で購入。“超特急”の速さでその土地をリニア代替地として登録し、さしたる耕作もしないまま、高値売却の可能性が生じている状況だ。

「20年に、奈良の経営者が農地を工業用地に転用するなどの意図がありながら、耕作を営むとする虚偽の書類を農業委員会に提出し、有罪判決を受けた例もある。それほど、農地の売買は法律で厳しく定められているのです」(社会部記者)