文春オンライン

2022/11/14

 男性Xが言うままに、クレジット決済で15万円を払い、このマルチ商法に参加する契約をします。ここにいたるまで、約4カ月です。

 このグループが使ったのは、旧統一教会が使っていたのと同じく、みずからの正体を明かさずに勧誘し続けるという巧妙なやり口です。「すぐに誘わない」「じっくり時を待つ」ことで、グループの思想にハマらせます。そして、しっかりグループの考えと本人の心が一致したところで、本筋の勧誘を行うのです。

 この手法を使われると、本人の意思決定がほとんど介在しないまま、知らぬ間に心がグループの思想にからめとられていますので、「ここがマルチ商法のグループである」と知らされたときには、もはや指示どおり先に進むしかない状況に陥っている、非常に恐ろしい勧誘です。

 本来、その後の人生を左右するような重要なことを決める場合、十分な情報を手にさせ、本人の意思で「やるか」「やらないか」の判断をさせなければなりません。

 しかし、正体を隠した組織的な勧誘では、その判断する自由を奪ってしまっていることになります。しかも、厄介なことに、いったん組織の考えにハマると、周囲の助言が耳に入らなくなり、いまの仕事をやめるなど、一途な思いで走り出してしまいます。

 心に入り込んだ思想の呪縛を解いて、本当の自分の姿に気がつくには、長い年月がかかります。その間に、お金と時間が奪われていきます。

 今回証言してくれた男性も、元マルチ商法の販売グループへの入会から、抜けるまでに4年の歳月がたっています。きっかけは、街コン、合コン、スポーツでの声がけで、出会った相手との何気ない連絡先の交換です。“気軽さ”のなかに、勧誘者たちはこっそり入り込んできます。

 正体を隠して、組織に引き入れるマインドコントロールの手法は、過去に旧統一教会が行っていただけではなく、今も、マルチ商法を始めとする様々な団体で用いられています。

「名称変更」をして悪評から逃れ続ける

 さて、この組織の舞台裏はどうなっているのでしょうか。過去に勧誘グループでリーダーとして活動し、裏の事情を知る男性に話を聞きました。

「年収2億円ほどを稼いでいる人もいましたね」

 男性はそう話します。そこからは、法律の規制を受けないように画策し、上だけが荒稼ぎできる、恐ろしいまでの悪質な組織運営の実態が浮かび上がってきました。

写真はイメージです ©iStock.com

 10年以上前は、この組織は美容・化粧品を販売する大手のマルチ商法の一グループにすぎませんでした。会員に毎月15万円の商品購入の過度なノルマを課すなど、儲けるためならどんな手段もいとわないかたちで販売網を広げていき、6000~7000人ものグループになっていきます。

 しかし、問題行動の多さから、大元のマルチ商法から改善通告を受け、組織を抜けざるをえない状況に追い込まれました。その後、このグループは独自のシステムに進化します。