ズラータ テレビ番組に出ていた時、私は小さかったんですけど、よくおばあさんと一緒にその番組を見て、面白いと思っていました。
彼はコミュニケーション能力みたいなものがあって、人前でスピーチするのが得意なので、「人の輪の中心になれる」という印象でした。ただ、最初は本気で大統領になると思っていませんでした。
ゼレンスキー氏が大統領になったことによる変化
――以前からウクライナの皆さんに知られていたんですね。
ズラータ 私の周りの人と話をすると、「お笑い番組の人は大統領になれない」とか、逆に「そういう人にしか国を変えられない」と応援する人もいて、いろいろな意見がありました。
――ズラータさんご自身はゼレンスキー氏が大統領になると聞いた時、どう思われました?
ズラータ ああいう人が大統領になったことがなかったので、「もしかしたら何か変わるかも」と思っていました。
――大統領就任後については、どう思われているのでしょうか。
ズラータ 戦争が始まる前までは、思っていたほどの変化がなかったです。気の強い人で、大統領の仕事は普通にこなしてくれていたかな。これからに期待しています。
昔は悪いイメージがなかったけど、今のプーチン大統領は…
――ロシアのプーチン大統領についてはどう思われていますか?
ズラータ プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領のお笑い番組でネタになっていて、彼のことを初めて知ったのはその番組だったと思います。子供の時はまだ政治のニュースとかを見なかったけど、そういう番組は見ていたので。悪者として扱われていて、その時はそんなに悪いイメージはなかった。最初はその番組の中だけのキャラクターだと思っていました。
でも今は、マトモじゃない印象。もう結構、歳もとっていますよね。マトモな人なら、無駄な戦争は起こさない。プーチン大統領を見ていると、日本の漫画『文豪ストレイドッグス』のシーンを思い出します。「みんなを殺せ」と言っているマフィアのボスがいるんですけど、そのボスは自分の治療をしてくれている医者に喉を切られて、代わりにその医者が組織のボスになるんです。プーチン大統領に対してもそういう状況が起きるのを、みんなが待っていると思います。
――ズラータさんはロシア人を憎んでいるわけではなく、戦争を起こしたプーチン大統領や一部の特権階級の人たちを憎んでいるそうですね。
ズラータ そうです。ロシアという国全体が戦争に賛成しているわけではないから。戦争に反対していて、そのために動いているロシア人もいるんです。
――戦争体験者として伝えたいことはありますか?
ズラータ 「今できることは、今するべき」ということですね。明日は何が起きるか分からない。明日にはできなくなってしまうかもしれないから、後悔しないように、今やっておくべき。
撮影=杉山拓也/文藝春秋
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