「ズラータ、あなたは日本に行くのよ!」
2022年3月16日の朝、ウクライナのドニプロで暮らす当時16歳のズラータ・イヴァシコワさん(17)は、母親からそう告げられた。『ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記』(世界文化社)は、日本に憧れるウクライナの少女が、戦時下のウクライナから日本までの逃避行を描いた日記を元にした作品だ。
苦難の末、日本にたどり着いたズラータさん。今は横浜で暮らす彼女に、戦火のウクライナでのこと、戦争そして祖国への想いを聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)
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戦争は歴史や映画の中のものだと思っていた
――ご著書の中では、ロシアの侵略が始まった次の日、学校で担任の先生から「明日から戦争になります」と告げられますね。戦争が始まる頃の雰囲気はどういったものでしたか?
ズラータ・イヴァシコワさん(以下、ズラータ) 戦争の噂は広がっていたんですが、よくあることだったので、まさか本当になるとは思いませんでした。実際に戦争になった時は意外でしたし、みんな備えていたわけではなかったです。
――本の中では、「戦争は小説や映画の中の出来事だと思っていた」とありますね。
ズラータ ええ、そうですね。自分たちに起こるものだとは思わなかったです。歴史とか映画の中のものだと。
――実際に戦争になったと実感した瞬間はありましたか?
ズラータ サイレンがよく鳴るようになった時です。戦争が始まったあとに時間を測ってみたら、4時間も鳴り続けていました。
戦争前には多分、ほとんど聞いたことがなくて。訓練の時に1回だけ流れるくらいで、数時間も鳴っていたことはありませんでした。
最近では家の近くに爆撃が
――ロシアの侵攻が始まった際、ガソリンスタンドで車が行列になったとか、スーパーから食品がなくなったことを書かれていますね。そのときの周囲の人の混乱など、どういう状況だったのでしょうか?
ズラータ 最初の侵攻当日は一番インパクトがあって、お店にすごい人が来て食べ物がなくなるとか、ガソリンスタンドとかもそういう状態でしたね。パニックというほどではないけど、それに近い状態かな。最初の数日はそれが続きました。
――最近、ドニプロの近くで戦闘があったようですね。ご家族の方と連絡は取れていますか。
ズラータ まだ水道とか電気はきているので、連絡は取れています。