「ズラータ、あなたは日本に行くのよ!」

 2022年3月16日の朝、ウクライナのドニプロで暮らす当時16歳のズラータ・イヴァシコワさん(17)は、母親からそう告げられた。『ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記』(世界文化社)は、日本に憧れるウクライナの少女が、戦時下のウクライナから日本までの逃避行を描いた日記を元にした作品だ。

 現在は日本語学校に通うズラータさんに、日本に興味を持った理由や、日本に来てからのこと、ウクライナと日本の違い、そしてこれからのことを聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

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ズラータ・イヴァシコワさん ©杉山拓也/文藝春秋

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日本への関心を深めるきっかけになったもの

――日本に来るにあたって、日本が好きで日本に来たいという思いがあったとのことですが、その原体験はおばあさんの家にあった日本語学習書だそうですね。

ズラータ・イヴァシコワさん(以下、ズラータ) そうです。一番のきっかけですね。

――それ以前に日本のイメージはありましたか。

ズラータ そんなになかったです。「漢字がある言語」というイメージだけですね。歴史の授業で第2次世界大戦の内容に日本も出てきて、そこに戦後の日本の歴史も少し書いてありました。でも、細かくは学んでいません。

――その状態から、日本語学習書に出会ったことで、日本に対する関心を深めていくわけですね。その後、日本へのイメージを前進させるきっかけになったものってありますか?

ズラータ 初めて読んだ日本の漫画『文豪ストレイドッグス』です。

漫画『BLAME!』やアニメ『攻殻機動隊』に影響を受ける

――著書にも書いてありましたね。初めての漫画だったんですか?

ズラータ そうです。ネットで見た時に絵が好きになって買ったんですけど、最初に読んだときはそれほど内容を理解できませんでした。でも、いろいろと言葉を調べて、もう一回読んだら内容もすごく好きになりました。

――『文豪ストレイドッグス』に出てくる、小説家・文豪たちはご存知なかったんですよね。

ズラータ 知らなかったですね。ウクライナでは、日本の作家についてそんなに多くを学ばないので。

――その他、ご自身に影響を与えた日本のコンテンツは何がありましたか?

ズラータ 他にもいろいろな漫画を読んでいて、例えば『BLAME!』という古いSFが印象に残っています。それを書いた作家(編注:弐瓶勉氏)は、元々建築が専門なので、背景がすごかった。

 アニメだと『攻殻機動隊』が好きで、あのような背景を自分でも描いてみたいと思います。