廃棄の際に埋めるのではなく全量を焼却すると仮定しても、環境にいちばんやさしいのはプラストローで、最悪が生分解性プラスチックのストローであることに変わりはなかった。
使い捨てのプラストローを使い続ければよい?
では、このまま使い捨てのプラストローを使い続ければよいのか。そうではない。打つ手がある。いちど使ったプラストローを回収して再製品化するリサイクルだ。もし9割をリサイクルすれば、全量を使い捨てて埋め立て処分する場合にくらべ、さきほどの8項目のすべてについて、その悪影響度がほぼ5分の1に激減するという。
ブラジルの研究チームが2020年に発表した論文でも、やはりプラストローが紙ストローより環境にやさしいという結果が得られている。
こちらの論文で興味深いのは、金属(鋼鉄)やガラス、竹でできたストローを「マイストロー」として繰り返し使っても、それが必ずしも地球環境の負荷軽減には結びつかないという指摘だ。ひとつには、洗う際に使う水や洗剤が環境に負荷をかけること。もうひとつは、付属品としてついてくる持ち運び用の布袋や洗浄ブラシだ。これらにも、資源やエネルギーが消費されている。
どういう点で環境に悪いのかは素材によりさまざまだが、おおざっぱにみて、いちばん悪いのは竹製のストローで、ガラス製も同程度。金属製はもうすこしマシで、使い捨ての紙ストローと同じくらい。もっとも負荷が少ないのが使い捨てのプラストローだ。
米国やブラジルでこういう研究結果がでていても、それをそのまま日本にあてはめるわけにはいかない。発電方法ひとつとっても、化石燃料を使うか再生可能エネルギーか原子力かによって、結果は違ってくる。結論は大筋では変わらないかもしれないが、ライフサイクルアセスメントは、それぞれの国や地域の実情に合わせて行うものだ。
これからは、日本でもこうした研究が盛んになることを願う。その結果をふまえて、日本の社会がプラスチックごみをどう扱っていくのかを決めていくべきだろう。
ウミガメの鼻にプラストローが刺さった動画が2015年に公開され、海洋のプラスチックごみ問題を世界に広めるきっかけになった。もし海洋生物のこうした被害を減らすことを無二の目標とするなら、かりに地球環境によくないとわかっていても、プラストローを紙ストローに置き換えることは有効だろう。それも社会のひとつの選択だ。