いま手元に、脱プラスチックの流れのなかで、紙製をはじめとするプラスチックストローの代替品が増えていることを報じる最近の新聞記事がある。そこには「環境にやさしいと頭では分かっていても、紙製ストローへの抵抗感を拭えずにいた」と書かれている。紙ストローがプラスチックストローより「環境にやさしい」ことを前提にした記事だ。

 その一方で、「紙ストローはプラスチックストローより地球環境への悪影響が大きい」とする研究論文が、最近になって目につくようになっている。紙ストローが環境にやさしいことを前提としたさきほどの新聞記事は、はたして成立するのだろうか。

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 米国の研究チームは今年1月、米国内で使われているプラスチックストローの全量を代替品に置き換えた場合、地球環境への悪影響がどう変わるかを比較した論文を発表した。

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 比較したストローは、従来型のプラスチックストローであるポリプロピレン製、条件さえ整えばやがて二酸化炭素と水に分解される「生分解性プラスチック」であるポリ乳酸製、そして紙製の3種類だ。

 そこで述べられている結論は、「ごみとしての最終的な処分方法が焼却であろうと埋め立てであろうと、プラスチックストローは、生分解性ストローや紙ストローより環境にやさしい」というものだ。

つくられてから廃棄されるまでにどれだけ悪影響が生じるか

 ストローを生産するには、まず原料が必要だ。プラストローなら原油や天然ガスからつくるポリプロピレンが、紙ストローなら植物由来の繊維であるパルプが原料になる。できた原料をトラックなどで加工工場に運び、そこでストローに成形し、製品を運んで販売する。そして使われ、廃棄される。

 これらの過程で電気を使えば、石炭や石油などの燃料で発電していた場合、地球温暖化や海洋の酸性化を進める二酸化炭素を排出することになる。運送にも燃料が必要だ。製造過程で薬剤を使えば、それが漏れ出て環境を汚す可能性も考慮しなければならない。

 ある製品の原料が生まれるときから使い終わって廃棄されるまでの「一生」について、環境にどれだけ悪影響を与えるかを量的に評価することを、ライフサイクルアセスメントという。国際的にその手法の基本形が決まっている。さきほどの結論は、これを用いて得たものだ。