実用車が使い潰される風潮を良しとせず、地道に自動車を収集し続けた前田彰三氏が富山県小矢部市に創設した日本自動車博物館(現在は石川県小松市にて営業中)は、知る人ぞ知るカーマニアの楽園として、日々多くの来場者で熱気に包まれている。
展示されている車両は常時約500台! そんななかでも、とりわけ熱い視線を集める車があるのだとか。はたしていったいどんな車なのか。ここでは、同博物館の職員を務める前田圭一氏が選んだ「来場者の熱い視線を集める人気車種ランキング トヨタ編」TOP3をコメントとともに紹介する。(後編では日産編を発表中!)
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日本車の立ち位置を変えた一台
第3位:トヨペット クラウンRSD
初代のクラウンはじっくり見られる方が多い車の一つですね。
クラウン自体が知名度の高い車ということももちろんあると思うのですが、日本の車文化においてとても重要な役割を担っていたのも、人気の一因なのではないかと思っています。
というのも、この車が発売されるまで、日本の車は「安かろう悪かろう」という見られ方をすることが多かったんです。長距離を走らせられるような耐久性がないから、タクシー会社もフォードなどの輸入車を使用していたというほどですからね。国産車への信頼が薄かったんです。
そんなときに国内の技術を結集して作られた初代クラウンは“タクシーに使っても耐えられる車”として評価され、実際に色々なタクシー会社に導入されました。
とはいえ値段も安価ではなく、最高級車として売り出されていたのが、このクラウンです。初任給が2万円程度の頃に約108万円だったので、今でいうと、1000万円くらいの価値でしょうか。当時は、戦後まだ10年ちょっとくらいしか経っていない時代。そんな高級車を購入できた人は限られていたでしょうね。
日本の大衆車の元祖
第2位:トヨタ カローラ 1100 DX
日本において“車を購入する”という文化がスタートする大きなきっかけとなったのが、このカローラです。そういう意味で、日本の車文化にとって、とても重要な役割を担った一台といえますね。
トヨタの歴史上一番売れている車でもありますし、当時発売していた車で、現在も名前が残っている車はクラウンとカローラだけなんですよ。名前を知っている車だからこそ足を止めてじっくりと観察する人が多いというのもあるかもしれません。
これは個人的な推測に過ぎませんが、ずっと同じ車名で新車を発表し続けているということは、トヨタとしてもそれだけ「カローラ」という名前を大事にしているのでしょうね。