プロの背景作画家として30年近く漫画業界で活躍中のアッツーは、『DEATH NOTE』『NARUTO-ナルト-』など数多くの現場でアシスタントを経験し腕を磨いた。
現在、自身のYouTube配信『アッツ―とコウセイのヘタッピ漫画道場』では漫画テクニックの伝授や新人漫画家を育成する企画を展開する一方、背景作画専門の「スタジオアッツー」を運営し、50人近いスタッフと数多くの作品の背景を手がけている。
今や最も腕利きの“背景作画家”となったアッツーに背景の極意を尋ねると、「大事なのは違和感のなさ。読者に読み飛ばされる背景こそ素晴らしい」という独自の美学が返ってきた。(全3回のうち1回目/#2、#3を読む)
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ズラリと並んだ色紙が先生からの信頼の証
アッツー 僕がアシスタントとしてお世話になった先生に頂いたものがほとんどです。その下にずらっと並んでいるのはゲームに登場するクリーチャーのフィギュアですね。ゲーム好きなもので(笑)。
――バンド関係のCDもたくさん並んでいます。
アッツー 大好きです。腕のタトゥーもX JAPANのHIDEの影響で、この腕が作品を生んでいるから飾りたいというポリシーを込めて入れました。
――『マツコの知らない世界』でもお話しされていましたが、アッツーさんは“背景作画という仕事に対してもっと光を当てたい”という思いから顔出しで活動されているそうですね。
アッツー そもそもYouTube配信は僕が携わる作品が少しでも有名になればいいなという思いから始めたもので、僕自身が有名になりたい気持ちはそんなにないんです。それよりも職人になりたい気持ちが強くて。
うちは実家が工務店をやっていたこともあり、中学を卒業したら大工になるつもりだったんです。ところが家族や学校の先生に大反対を食らって、高校ぐらいは出なさいって無理やり入れさせられたのが美術寄りの学校だったんです。絵は好きだし得意だったので、そこでデッサンと油絵をメインにひと通り勉強しました。
――漫画家になろうと思われたきっかけは?
アッツー 高校3年生の時、賞金に目がくらんで漫画賞に応募したところ、前途有望として名前だけ掲載されて。それで大工から漫画家に目標を変えたんです。漫画家さんの方が儲かる気がしたので(笑)。ただし、そこから連載につなげることは難しく、アシスタントとして先生の手伝いをすることになったんです。
最初は白泉社さんで連載をしている先生にお世話になって、22歳の時に「少年ジャンプ」に持ち込んだ際、編集者の方にアシスタントの仕事をくださいとお願いしたところ、次の日に電話がかかってきて『ROOKIES』の森田まさのり先生のところが空いてますよと言われたんです。
その時は“絶対無理だ、あんな上手い絵が描けるわけない”と思ったんですけど、クビにするのは先生なので「できます」とハッタリをかけて(笑)。周りのスタッフにこんな絵でよく来たねと思われたら悔しいじゃないですか? とにかく上手ければ文句は言われない。この空間にいる誰よりも上手く描こうと思って必死で練習しました。結果、最終回までお世話になったんですけれども、大事な表紙のメインの背景を任されたことも何度もあります。