「監督も決まっていない状態」
「ZipangはMBSHDや毎日新聞という大きな後ろ盾のある会社です。仮に前回のような映画制作が出来なくなるような事態になったとしても、サポートしてくれるのだろうと思い、Zipangさんにお願いをしました」(上富良野町の担当者)
この事業を巡り、Zipangは総務省の「地域活性化起業人」制度を利用。都市部で働く企業人材が、地方で町おこしに貢献すれば、総務省から交付金が支払われる仕組みである。最大で年間560万円が支給されるのだが、Zipangは昨年度分を受け取っている。
そしてA氏は、2021年の7月から上富良野町に家を借り、車もレンタル。月のうち何日間かは上富良野町で過ごすようになったが、これには上富良野町からの資金も出ている。
また上富良野町は、映画の中でも使用する、十勝岳噴火のCG制作をZipangに発注。今年1月に納品され、上富良野町は990万円を支払った。だが――。
「Zipangから肝心の映画の撮影のスケジュールを出してもらえず、監督も決まっていない状態が続いたのです」(同前)
実は現場で指揮を執っていたA氏が今年1月末に体調を崩し、現場から離れることになったのだ。
「その後、吉廣社長や後任の担当者が引き継いだのですが、今度は制作費についての問題が出てきた」(同前)
制作費について、連携協定書には、〈2億円を下回らない規模となるよう努め〉とある。そしてこのうち上富良野町の〈負担総額の上限は8000万円〉。この予算は、町が議会に提案し、可決されて決まった金額だ。
一向に進まない進行に、業を煮やした上富良野町の担当者は、最後通告として今年4月24日、東京に向かった。
その話し合いで、担当者は吉廣氏と、制作費に関して齟齬が起きていたことを感じ取ったという。
「上富良野町は企業版ふるさと納税で集めた寄付金を元に8000万円までは支払い、Zipang側が残りのお金を準備するという認識でした。しかし吉廣社長は理解されていなかったようなのです。お金の問題が解決できなければ、撮影をスタートさせることは出来ない。ただでさえ遅れているのに、まったく前に進まなくなった。そこで9月頃には連携協定の解消も考え、Zipangさんは諦めて、次の制作会社を探すアンテナも広げ始めました」(同前)
Zipangに振り回された結果、制作が遅れに遅れてしまった上富良野町。同様の中止は、徳島県の美馬市で起きていた。美馬市の担当者が語る。