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 京都府内のパチンコ店が加盟する「京都府遊技業協同組合」に取材をすると担当者は「京都で今回のようなケースが起こったのは残念。クギに触るのは法令違反で、普段から法令遵守は組合店に呼びかけています」と答えた。

 しかしパチンコ業界では、店がクギを調整する行為は「台のメンテナンス」「玉が当たって自然にずれていった可能性もある」といった言い分で長年グレーゾーンとされてきた。パチスロ専門メディアの記者は、摘発の背景をこう推測する。

写真中央の「ネルフ」のマークがついているのが入賞口。その上のクギの幅を調整すれば玉の入りやすさを変えられる 読者提供

「一昔前はクギを調整する『釘師』と呼ばれる人たちがいて、彼らを題材にした人気漫画もあったくらい、クギの調整は有名な話。客にとっても店にとっても、調整自体は暗黙の了解でした。ただコロナ禍以降はお客さんの減少が止まらず、クギを締めて効率よく稼ごうとする店は増えているんです。摘発には十分な証拠が必要なため、元職員の告発やライバル店の密告、負けた客の腹いせなどが背景にあるはずです」

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 京都の摘発に先だって、11月7日には仙台でもパチンコ店が摘発を受けている。さらに、全国のパチンコ店関係者を対象に「クギ曲げ」を講習していた「クギ学校」と呼ばれる業者も、風営法違反のほう助罪で摘発されている。「クギ学校」は少なくとも10年以上の歴史を持ち、合計2000人以上の関係者にクギの曲げ方を教えていたといい、教え子たちは全国に散らばっている。

「クギ学校」も摘発を受けている FNNプライムオンラインより

「負けるときは負ける。勝つときは勝つ」と言い放つ女性も

 別の業界関係者は、警察とパチンコ業界を襲ったある“外圧”が影響しているのでは、という。

「日本版カジノは、パチンコ業界にとっては迷惑でしかないんです。もちろん商売敵でもありますが、それ以上にギャンブル依存症の問題になった時に『パチンコはどうなんだ』という話は避けられない。なので警察としてはパチンコ業界をちゃんと取り締まっているとアピールする必要があるのでしょう」

 それでもパチンコ店には、業界のごたごたをよそに今日も多くの人が集まっている。「クギ曲げ」が発覚した当の店舗の常連客はこうも言っていた。

「このお店は年寄りが多くて、みんな年金から1000円、2000円の少ない種銭を捻出して1円パチンコや安いスロットで長く楽しんでいるんや。常連同士で『たばこ1箱勝った』とか、『負けたから昼飯は500円や』とかそういう話をする社交場なんよ。そんなわしらを見て、お店さんも長く遊べるように釘を開いてくれたんかねえ」

 近くに座っていた高齢の女性常連客はこう言い放った。

「なんであれ負けるときは負ける。勝つときは勝つ」

 パチンコ店の摘発が増えることで、どんな影響が出るのだろうか。