放送局のアナウンサー、いわゆる局アナは退社すると、たいていはフリーのアナウンサーに転じるか、あるいは結婚・出産などを理由に仕事自体をやめてしまうケースもある。そのなかにあって異彩を放つのが、元テレビ朝日アナウンサーの前田有紀さんだ。きょう1月17日は彼女の37歳の誕生日である。
前田さんは2013(平成25)年、イギリス留学を理由に10年間勤めたテレビ朝日を退職している。留学の目的は、子供のころから好きだった花と緑にかかわる仕事に就くためだった。イギリスでは、語学学校やフラワースクールに通ったあと、コッツウォルズ・グロセスター州の古城で見習いガーデナー(庭師)として働いた。帰国後はさらに東京都内の生花店で約3年間修業を積む。現在はフラワーアーティストとして、パーティやウェディングの装飾など、花にまつわるさまざまな仕事を手がけている。
華やかなアナウンサーの仕事から、まったく別の世界に飛びこむにはさぞ大きな決断があったことだろうと思いきや、本人は次のように語っている。
「でも、やっぱり、人生は一度きりしかないし、仕事で出会った一流のアスリートや社会で活躍している方々のお話をうかがっていると、『みなさん好きなことを仕事にして輝いてるな』ということを感じていて、『自分も一番好きな植物のことを仕事にできたら、どれだけ人生がたのしいだろうか』と思ったら、その好奇心を形にしてみたくなって、考えだしたら止まらなくなったんです。だから大きな決断をした、というよりは『なんかもう止まらなかった』という感じでしたね」(「ほぼ日刊イトイ新聞」2017年11月6日)
修業していた生花店は妊娠中、つわりがひどくて、いったん区切りをつけるためやめたものの、同時期のインタビューでは「子供に自分が夢を叶えながら仕事を楽しむ姿を見せたいと、むしろ意欲が湧いているくらい(笑)」と前向きな姿勢を見せた(「Woman type」2016年8月1日)。その言葉どおり、現在は子育てをしながら仕事をこなす。年齢やキャリアを重ねると、やりたいことが別にあってもなかなか一歩を踏み出せないという人は案外多いだろう。そんな人たちに、前田さんの挑戦は希望を与えてくれる。