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 そのあたりを佐内正史本人に問うと、

「展覧会会場の壁に写真が飾ってあったりすると観る側も構えてしまうけど、Tシャツに写真がのっていれば、動いたりよれたりしていろんな見え方がするだろうし、街で偶然見かけたりすることもあって、楽しくていいんじゃないかな」

 と気負わない。街のあちらこちらで「動く写真の展覧会」が開かれるなら本望だ、といったところのよう。

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©佐内正史

 さらに佐内は2021年、ミュージシャン曽我部恵一と組んだ音楽ユニット「擬態屋」名義で、ファーストアルバム『DORAYAKI』をリリースした。

 佐内が詞を書き、朗読し、そこに曽我部が音を合わせていく。写真と音楽、それぞれの領域で確固たる独自のスタイルを確立しているふたりが個性をぶつけ合うことで、従来のジャンルに収まらないまったく新しい表現が生み出されている。

「蛇口から水を飲む 少しクセになってる」
「いい土器あった どんぶり買ってきた とろろを食べた」

(『ギタイヤ』)

 佐内の書いたこんな歌詞を、口の中で転がしたり、音楽に合わせて聴いたりすると、意味も理由もわからぬがなんとも快い。佐内写真を虚心に眺めているときの心地よさと、どこか似ている。

福岡でジャンルを越境した表現に触れる機会が

 佐内正史の写真をナマで観られたり、さらには擬態屋のパフォーマンスを体験できる機会がある。

 11月23日に福岡のホテルSO SUMIYOSHI を会場にして開かれる、「群日」と名付けられたイベントだ。ホテルの各室をオープンにして、インテリア・洋服・レコードショップが店を開いたり、地元のレストランやカフェがその日かぎりのメニューを提供したりと、ジャンルを超えたカルチャーの祭典が繰り広げられる。

写真集『写真の体毛』(2022年、対照)より ©佐内正史

 そのなかに、佐内正史写真展「体毛の床」があり、また擬態屋公演「Radiation-blue」が開かれる。

 ジャンルを超越した自由な表現を浴びるように体感して、いまの世を肯定的に眺めてみたいところだ。

INFORMATION

「群日」                 
11月23日
ホテルSO sumiyoshi
www.takuramacan.com