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「あの人やだったな。お尻さわってくる人」キッズラインわいせつ事件から1年後に娘が明かした“衝撃の新事実”《安全なシッターマッチングは可能なのか》

2022/11/27
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キッズラインは改善したのか

 8月30日、経沢香保子社長への取材を申し込んだが、書面回答するとの返答があった。9月2日、「事件発覚からこれまで、性被害や虐待防止に対して、どのような対策が実現してきたか」「虐待がうたがわれるようなシッティングを防げなかった原因をどう考えているか」等について文書で質問を送ったところ、9月13日にこれまでホームページで公開してきた報告書のリンクが送られてきた。

「弊社としてのご返答」ということで、経沢香保子社長からの回答はなかった。

 シッター2名によるわいせつ行為発覚の後、キッズラインはさまざまな対策を打ってきた。しかし、対策をした後にまた別の問題が発覚するということを繰り返している。キッズラインが公開している報告書に記された対策と、その後に起きた事件を整理してみよう。

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キッズライン公式サイトより

2020年4月 【問題発覚】橋本被告逮捕

2020年5月 安全管理委員会設置

2020年6月 【問題発覚】荒井被告逮捕

2020年7月 リスクコンプライアンス委員会設置

2020年12月 【問題発覚】自治体へ届出をしていないシッター(※1)を登録・紹介してきたと判明。内閣府補助金事業では201人のシッターが無届のまま働いており、2690万円の内閣府の補助金を返還

2021年1月 「社内で気づいた事故や問題についてはレベルを問わずにコンプライアンス部門へ事故報告」するなどの業務フローを整備するため、社員向けコンプライアンス研修の実施

2021年2月 「収集されたリスク情報は全てコンプライアンス部門がレビューする運用」を実施
2021年3月 報告書で社内で問題を把握してから対策の徹底や行政への報告等がされなかったことなどについて「認識の甘さ」や「組織体制の不備」が原因と指摘

2021年7月 【問題発生】シッターが赤ちゃんを激しく揺さぶる事案が発生

2021年10月 【問題発覚】SNS上で問題になるまで内閣府に報告しなかったことが問題視され、内閣府補助金事業の新規停止処分

2021年11月 調査担当の設置
2021年12月 法令に基づいた安全な保育を行うためのシッター向けの研修を新たに開講し、講習とテスト受講を必須化
2022年1月 保育士資格をもつ社員の評価プロセスへの参加、シッター向け保育相談窓口の設置
2022年2月 医療機関と連携 など

2022年8月 対策を評価されて新規停止処分が解除

 こうして問題が発覚したり、指摘されれば、対応をしてきた。しかし、場合によっては子どもの命にかかわる問題が発生するベビーシッター事業の場合は、ことが起きてからの対応では遅い。

シッター数4500人→3300人へ

 事件前4500人と公称していたシッター数(家事代行も含む)だが、現在ウェブサイトには「約3300名から選べる」と表示されている。これは家事代行を含めた人数で、キッズラインによると「シッター数は2000名弱」だという。

 人数の減少についてキッズラインはこう回答している。

「兼業でベビーシッターをされている方々も多く、本業が忙しくなったという理由で退会される方が多いと認識しています。なお、数は少ないものの、様々な基準が厳しくなったからということを退会理由に掲げている方もおります」

キッズライン公式サイトより

 9月14日、経沢香保子社長はTwitterに「日本の社会を進化させる事業に取り組む。あらためて、その一心で経営をして参ります。経沢香保子」とつぶやき、橋本被告の判決後しばらく止まっていたSNSの更新を再開させた。

 これまで繰り返されてきたキッズラインの不祥事。キッズラインは、内閣府の補助金事業の最大の引き受け先ともなってきた。内閣府や事業を管轄する全国保育サービス協会は、キッズラインが抱えるシッター数や全国展開している規模の大きさゆえに、問題が起こっても認定を取り消しにくかったという背景もあるだろう。  

 事件から2年が経ち、新たに子育てを始める家庭もある中で、事件を風化させず注意喚起を続ける必要がある。

「あの人やだったな。お尻さわってくる人」キッズラインわいせつ事件から1年後に娘が明かした“衝撃の新事実”《安全なシッターマッチングは可能なのか》

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