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なぜ母親たちは「反ワクチン派」に染まるのか…根拠不明でも「医療デマ」が拡散してしまう理由

新生児科医・小児科医ふらいと先生インタビュー #2

2022/11/23
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同調圧力の強さが「デマ」を強固にする?

――ママ友経由で偏った思想に出会うケースもよく聞きます。

今西 僕は母親の社会的なつながりに興味を持っているのですが、社会のつながり、ソーシャル・キャピタルを見ていくと、実は日本はそれがとても高い。ムラ的な感じです。財布を落としても返ってくる、みたいな。社会的なつながりが高い国=安全な国だということでもあります。

 例えば、地震などの災害時。社会的なつながりの強さによって復興が行われたり、隣の人が怪我したら助けたり。逆に低いのは、アメリカの一部地域です。低いとどうなるかというと、災害があると治安が非常に悪くなる。

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 ニューオリンズを襲ったカタリナ・ハリケーンは、典型的な例でした。もともと安全な都市だったのに災害後は犯罪が多発し、とても人が住めるような状況ではなくなってしまった。

 それと比べると、2011年の東日本大震災は犯罪が増えたという情報もありますが、欧米ほどではありません。飢えても、スーパーできちんと並んだり。ところが裏を返せば、ソーシャル・キャピタルが高い=社会的なつながりが強いということは、出る杭は打たれ、同調圧力が強力だということでもあります。

 母親が集い同じ様にいたい気持ちから、ひとつの情報を皆で信じる。イデオロギーとして子どもを守りたいという気持ちで団結した結果、デマにハマるケースもあるでしょう。それは、学力とは関係ありません。勉強する力とリテラシーを判断する力は、まったく違うような気がしています。

 また、妊娠出産育児はスピリチュアルとの親和性も高く、そうしたビジネスからデマや迷信が刷り込まれるケースも山ほどあります。発達障害に効くマッサージや水など、さまざまなものが確認されています。自然派傾向のある新興宗教専属の小児科医がいるような地域もあるので、あらゆる場所から、偏った思想や誤情報、迷信が入り込んできます。