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なぜ母親たちは「反ワクチン派」に染まるのか…根拠不明でも「医療デマ」が拡散してしまう理由

新生児科医・小児科医ふらいと先生インタビュー #2

2022/11/23
note

――情報を自分で見極めるコツはありますか。 

今西 公衆衛生学では、誤情報・デマを流したり、陰謀論を広めたりする人たちが求めるものの頭文字をとった「MICE(マイス)」と呼ばれる言葉があります。

 マネー(Money)はビジネス。イデオロギー(Ideology)は信条や政治的姿勢。コンプロマイズ(Compromise)は妥協や自己矛盾。エゴ(Ego)は、自我や承認欲求。疑わしい情報に出会ったら、その情報によってMICEを得る人がいないかどうか、MICEが動機になっていないかチェックしてみてください。

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 僕はMICEの中で、一番大きいのはエゴかなという気がしています。例えば「ビタミンKのシロップ」。産まれたあと赤ちゃんに飲ませる出血予防のシロップなんですが、月に2~3人は拒否するお母さんに出会います。ところがそういうお母さんはファストフードが大好きだったりするんですよ。

 自分はファストフードを食べながら「添加物はダメ」と主張する。だから論理としては矛盾しているのですが、エゴによってその情報を信じている。子どもを思う気持ちからですので、責めるべきではないのですが、誤情報であることには変わりありません。#1でお話しした怪しい療法に手を出す医師の場合は、マネーですよね。

デマに振り回されないために

――自分で見極めるのは難しい場合はどうしたら?

今西 専門的な内容を分かりやすく一般の人に説明できる人=ミドルマンを見つけておくのがいいですね。最近ですと、研究者の成田悠輔さんとか。ああいう人たちは、難しいものを分かりやすく伝えられる技術がすごい。それをひとりに絞らず、複数チェックできるとなおいい。

 さらに子育てや出産の場合、ミドルマンは必ずしも医療者でなくてもいい。一般の方でそういう医療のリテラシーとか高い人、いますよね。例えば医療リテラシーの高いママ友とか。そういう人たちの役割って、すごく大切だと感じています。もう一つは公的機関。例えば厚生労働省や日本小児科学会とか。そういった公的機関が出す情報も、あわせて確認していきましょう。
 

なぜ母親たちは「反ワクチン派」に染まるのか…根拠不明でも「医療デマ」が拡散してしまう理由

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