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「お前この野郎! デブ専って言ったのか !?」地回りヤクザと後輩力士が起こした“面倒なトラブル”《貴闘力が語る「大相撲土俵裏」》

『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』#2

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 親父は小学生の時に戦争があって、小学校1年までしか学校に行っていないため読み書きもできない。当時、街中にはどうしようもない人間がたくさんいる中で、のし上がっていくためには腕力しかなかった。腕力だけでヤクザの世界を上がっていった人だった。

 しかし、親父は本当は相撲取りになりたかった。だから、自分に金がなくても相撲取りを応援する。そこには、どうにか利用してやろうという考えはなかったようだ。相撲取りがヤクザを利用することはあっても、ヤクザが相撲取りを利用することはあまりない。たまの飲会がいいところだろう。ご飯を食べに行くときに、有名人を連れていく優越感を味わうのだ。力士とプロレスラーは地方の飲み屋に連れていくと、ヤクザにとってステータスとなる。

「相撲中継に映りたい」とヤクザが願うワケ

 これはテレビ番組「クレイジージャーニー」でお馴染みの裏社会に詳しい丸山ゴンザレスさんから聞いた話だが、刑務所では相撲の中継が流れるので、ヤクザは塀の中に入っている親分や身内に顔を見せるために映りやすい席に座りたい。だから、「向こう正面の一番テレビに映る席を取ってくれ」などと融通してもらうという話もあるそうだ。

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 しかし、相撲協会もそのやり取りを見て見ぬふりをするわけにはいかない。実際にヤクザに席を斡旋した親方が処分されたケースもある。

 例えば2009年7月の大相撲名古屋場所において、暴力団山口組系弘道会の幹部らが土俵下の席で観戦していたのが翌2010年に発覚した。当時の相撲協会は関与した親方に2階級の降格や部屋消滅の厳罰を下した。

 ちなみに、監視の目が厳しくなった現在はヤクザに相撲の席を融通することは不可能だ。

 ヤクザに席を融通した親方の処分を見ても分かるように、今はヤクザと表立って付き合うことは許されない。

 しかし、歴史を見ればヤクザと付き合いのない部屋のほうが少ないと言ってもいいかもしれない。山口組三代目組長の田岡一雄さんは、若い衆の時に相撲部屋に居候していたときがある。つまりはそういう関係なのだ。昔は引退後の力士がヤクザになることも多かった。

 昔の相撲界にはヤクザを凌ぐ悪いやつが山ほどいた。

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