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相撲協会と貴乃花に亀裂が走ったきっかけ

 2017年9月場所後の10月25日、秋巡業鳥取場所前日にモンゴル人力士を中心として行われた酒席において、横綱・日馬富士(はるまふじ)が十両・貴ノ岩(たかのいわ)に暴行する事件があった。

 貴ノ岩に対して白鵬が説教をしている最中に貴ノ岩のスマホが鳴り操作しようとしたため、日馬富士が注意し、貴ノ岩を平手で十数回、カラオケのリモコンで頭を数回殴るというものだった。

 日本相撲協会は日馬富士関の暴行の報告を怠ったとして、被害者・貴ノ岩の師匠であり巡業部長の貴乃花の理事解任を決定、「役員待遇委員」に降格となった。相撲協会で理事が解任されたのは初めてだった。

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 貴乃花の理事解任は、この暴行事件のみで決定づけられたものではない。事の発端は2010年、貴乃花が理事選に出たあたりから相撲協会と貴乃花に亀裂が生まれていった。

正代大関昇進披露祝賀会で祝辞を述べる日本相撲協会の八角理事長 ©時事通信社

圧力はありつつも、理事選の立候補は取り下げず

 当時、まだ相撲協会で影響力の大きかった北の湖親方が貴乃花を可愛がってくれていたので、他の親方衆は何も言えなかった。その間に貴乃花はどんどん基盤を作っていったのだが、北の湖親方の死後流れが変わった。目の上のたんこぶがいなくなったのを幸いに貴乃花崩しが始まったのである。北の湖親方が生きていたら、貴乃花もクビになっていなかったかもしれない。

 私がまだ親方をしていたときに貴乃花が来て「実は理事選に立候補しようと思ってるんだけど」と相談を受けた。私としては、そんなに急がずとも次の選挙でもいいのではないかと思ったが、貴乃花は「時間がないんだ」と頑なだった。

 あまりにも言うので、私も二子山の株を無償で貸してもらっているし、本心では私も改革をしたかった。だからこそ、貴乃花を信じすべてを託すことにした。

 しかしその話を耳にした二所ノ関一門の人間は、「理事選には出なくていい。言うことを聞けないんだったら出ていけ」と言ってきたのだ。その急先鋒が尾車だった。

 そのような圧力はありつつも、貴乃花は立候補を取り下げなかった。ところが味方が少ないため、苦しい戦況であることに変わりない。理事選は親方が1人1票を持っていて、各一門で誰に投票するかは固まってしまう。