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「ドイツ戦の勝利は奇跡ではない」“マイアミの奇跡”を経験した城彰二が語る、森保ジャパンとアトランタ五輪代表の“決定的な差”

城彰二が見るカタールW杯とサッカー日本代表 #2

2022/11/25
note

アトランタ五輪で起きた「マイアミの奇跡」との“決定的な差”

――森保監督の評価がドイツ戦の勝利で上がっていますね。

 あの5バックは、その前のカナダ戦で残り5分とロスタイム5分ぐらいしかやっていないんですよ。それをあそこで思い切ってやってくるっていうのは、ちょっと想像がつかなかったですね。4年間で、もうちょっとそういうのを出してよって話なんだけど(苦笑)。

 でも、システム変更の判断をしたのは本当に正解だったと思います。後半も4-2-3-1のままだったらうまくいってなかったと思うし、もっとやられていたかもしれない。勝負どころを感じ、交代のタイミング、システムの変更のタイミングは、本当にすごかったです。これは、高く評価されてもいいと思いますね。

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後半から冨安を投入してシステムを変更し、反撃の狼煙をあげた ©JMPA

――ただ、まだ決勝トーナメントに進出できると決まったわけではありません。ベスト8を目指すと言った以上、本当の評価はそこでされるべきかなと思いますが。

 グループリーグは、まだ2試合あります。アトランタ五輪の二の舞ではないけど、2勝1敗でグループリーグを突破できない可能性もある。ドイツ戦に勝って、いきなり1試合目で勝ち点3を奪えたのはすごく大きいけど、喜んでいる場合じゃない。それは日本代表の選手みんながわかっていると思いますし、ドイツ戦の勝ち点3を無駄にしないようにコスタリカ戦を戦わないと、スペイン戦は追い込まれる試合になる可能性が出てきます。

ドイツ戦、後半から覚醒した遠藤航 ©JMPA

――城さんが出場したアトランタ五輪では初戦のブラジルに勝ちながらも2戦目のナイジェリアに敗れ、最終戦はブラジル、ナイジェリア、日本の三つ巴の戦いになりましたが、結局2勝1敗で決勝トーナメントに進出できませんでした。

 アトランタ五輪の時は、まさかブラジルに勝てるとは思っていなかったんです。でも、初戦で勝ち点3を奪って、2試合目のナイジェリア戦は引き分けでもいいと思っていました。勢いはあったんですが、自分たちの実力も理解していましたね。自分らは、たまたまブラジルに勝っただけ。実力的にはまったく歯が立たない状態でしたし、勢いだけで臨んだ2試合目のナイジェリア戦は完全に力負けでした。

 でも、今の日本代表は自分たちの時とはまるで違う。今回のドイツ戦の勝利はみんな奇跡というけど、そうじゃないと思うんです。自分らは「マイアミの奇跡」でしたが、今の代表は後半に試合の流れを変え、自分たちの形で点を奪えています。力がある証拠ですし、選手も自信を持っているように感じるので、今大会はかなりやりそうな雰囲気がしますね。