カタールW杯が始まって以来、最大の番狂わせとして、世界中に衝撃と驚嘆を与えた日本代表。そのドイツ戦で輝きを見せたのは同点ゴールを決めた堂安律や決勝ゴールを叩き込んだ浅野拓磨の攻撃陣だが、試合の流れを劇的に変えたということでは、GK権田修一(清水エスパルス)だろう。
「僕らは新しい景色を見るためにここに来ているので、今日、勝ったことは嬉しいですが、もう終わったことですし、次のコスタリカ戦に向けてリカバリーしたいと思います」
試合後、権田は淡々とそう語ったが、いつもよりも柔和な表情がこの日の勝利が格別だったことを物語っていた。同時に、無事に戦い終えた安堵感みたいなものも漂っていた。
権田はW杯のメンバーから落選する可能性があった
実は、権田は一時期、W杯のピッチに立つことはもちろん、メンバーに入ることも難しい立場に置かれていた。
9月23日、ドイツ遠征での初戦のアメリカ戦、権田はスタメンで出場したが、相手選手との接触プレーによって上半身から落下し、背中を負傷、前半45分で交代した。権田はそのまま途中離脱し、日本に帰国。その後、10月8日に行われた明治安田生命J1リーグ第32節・川崎戦で復帰を果たした。だが、試合途中にDF谷口彰悟と接触し、負傷退場。のちに肋骨にヒビが入ってきたことが判明し、W杯は難しくなったと感じた。
再びリーグ戦に戻ってきたのは、10月22日、静岡ダービーの磐田戦だった。その頃はまだ、体の調子が100%ではなく、動きももうひとつだった。だが、1週間後の鹿島戦、そして最終節の札幌戦は自分らしいプレーがようやくできるようになった。
残念ながら、所属クラブの清水エスパルスはJ2に降格してしまったが、権田は森保監督の高い評価を受け、GKとして日本代表のメンバー26名に選出された。この時、権田は「素直にうれしい。あとは代表でやるだけ」と決意を新たに代表チームに合流した。