4本の連続セーブで試合の流れを引き寄せる
後半24分からドイツに決定的なシュートを立て続けに4本打たれたが、そのすべてを跳ね返した。
「必死でしたよ。シンプルに止めるしかなかった。それが僕の存在意義でもあるんで。本当は、PKを取られないで0-0で進めるのが僕らのプランだったんですけど、僕がPKを与えてしまったので、チームとしてはプランが狂っちゃいました。でも、ロースコアで進めていれば、アルゼンチンに逆転勝ちしたサウジアラビアもそうですけど、チャンスがあるっていうのはチームみんなで話をしていました。このチームは逆転勝ちがあまりないってキャプテン(吉田麻也)が言っていましたけど、スペースがあれだけできているとなると、僕らにもチャンスが出てくるだろうなって思っていました」
権田の勘は当たり、後半30分に堂安律が同点ゴールを決め、38分には浅野拓磨が決勝ゴールを叩き込んだ。権田の好セーブが試合の流れを引き寄せ、大きく変えたのだ。FWや中盤の選手ではなく、GKでも試合の流れを変えられるということを証明した試合でもあった。
「試合の流れを変えたのがキーパーのセーブだって言われるのはすごくうれしいです。でも、今日は途中から出た選手たちが試合を決めてくれた。それって簡単なことじゃないですから。ワールドカップに意気込んで来て、スタメンで出たい。でも、出られない。それでもサブ組の選手はすごく声を出してくれたし、そういう悔しい気持ちを逆に力に変えている。(堂安)律と同じテーブルでご飯を食べているんですけど、『俺、決めますよ』といっていたし、実際に途中から出て決めた。そういう強い気持ちでプレーしている選手がこのチームには26人いるので、それが本当に流れを変えた要因だと思いますね」
権田は、嬉しそうにチームメイトの活躍をたたえた。
試合後、権田はこの試合のMVPに選出された。「PKを与えたGKがMVP?」と思われるかもしれないが、この試合での権田のプレーが日本の行く先を変えたと言っても過言ではない。サッカーはミスがつきもので、GKは失点に絡んでしまうが、それを取り返すことはワールドカップという大舞台でも十分に可能だということを、権田は自分のプレーで証明したのである。