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秋元康が巧みにすり替えた“恋愛禁止ルールの本質”

 だからこそ、恋愛禁止ルールの取り扱いは“要注意”だった。2012年6月、秋元康氏は出演したラジオ番組「爆笑問題の日曜サンデー」(TBSラジオ)で太田光に恋愛禁止についてこう語っている。

《(恋愛禁止を)作ったわけじゃないけど、暗黙のルールだよね》

 

《決して僕はみんなの前で、恋愛禁止って言ったことはない。みんなはでも、そりゃアイドルだからねって》

 

《恋愛がいけないんじゃなくて、スポーツと同じで、そんな暇はないはずなんですよ、一生懸命やったら》

秋元康氏

「秋元さんがうまかったのは、“恋愛禁止”を“本人のアイドルとしての自覚”にすり替えたことですよ。多くのファンのホンネとしては、自分の推しには自分以外の誰かと恋なんてしてほしくない。しかしそれは、推しの幸せを踏みにじる可能性のある厳しいルールです。運営にとっても、アイドルたちの人権を侵害しかねない。しかしそれを“本人の自覚”の問題にすれば、ファンたちは自分が推すアイドルの熱愛について大手を振って非難できます。

 しかし今回、向井地はこの恋愛禁止ルールの繊細な取り扱いを間違えた。傍にいる“大人”がサポートできていれば今回の発言はなかったかもしれませんが、いま運営にそんな体制はありませんからね……」(同前)

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猪野、父親とともにマンションの内見をする岡田 ©文藝春秋 撮影/細田忠

結成から17年、秋元康とAKBの距離は開くばかり

 かつては“大人”の役割を総合プロデューサーの秋元康氏が担っていた。しかし、現在は状況が変わってきているようだ。

「秋元さんとAKBの距離が大きく開いてしまっているんです。今のメンバーたちのほとんどは、秋元さんに相談どころかまともに会話すらしたことがない子も多い。かつては秋元さんやAKSの代表が直接メンバーと連絡を取り合って頻繁に食事に行き、自らメンバーのケアを行っていたんです。

 結成から17年が経ちスタッフの面々も様変わりしました。いま、運営側にAKBを演出しきれる力はないのかもしれない」(同前)

たくさんの人が押し寄せた秋葉原のAKB劇場 ©時事通信社

 秋元康氏が作り上げた高度な演出装置である“恋愛禁止ルール”。しかし時代の移り変わりは早く、その言葉は令和の空気に合わなくなっていることも事実だ。AKBはファンの気持ちを掬い上げ、時代に合わせてアップデートさせることはできるのだろうか。