「あまりにストイック」舞台にこだわった演劇人生
近年も渡辺さんの病状を心配した郁恵さんが、舞台の降板を促すことがあったという。それでも、バラエティやドラマに比べ体への負担が大きい舞台――中でも文学座の舞台にこだわり、積極的に立ち続けたのには理由があった。
2022年9月20日号の「FLASH」のインタビューで、渡辺さんはこう語っている。
「長く役者をやっていると怒られることがなくなるんです。(中略)でも、文学座は伝統的に後輩が先輩に歯に衣着せぬもの言いをします。そこで『俺はまだ、これができないのか』とわかるんです。それと役者を目指したときの『みんなで何かを作りたい』という思いにさせてくれる役者さんやスタッフさんが文学座にはまだまだいるんです」
「渡辺さんはみんなのお兄さんのような存在」
文学座で時間を共にした経験があるという前出の舞台関係者は、嗚咽をこらえながらこう話してくれた。
「渡辺さんはみんなのお兄さんのような存在でした。いつも非常に愛に溢れた方で、舞台終わりのカーテンコールまでお客さんに向けて笑顔を絶やさず、手を振り続けていました。プライベートでは、昔から生粋の将棋好きで何度か手合わせしたことがあります。その時に出てくるのは妻である郁恵さんや、息子さんとのお話ばかり。いつも笑顔で、嬉しそうに話していて……。演劇に関しても、家族に関しても、彼のように愛に溢れ、またそれ以上に周りから愛されていた人をこんなに早く失ってしまうのはあまりにも惜しい。ご冥福をお祈りいたします」
今月17日、18日には和歌山県内で行われる「渡辺徹の音楽付き朗読公演」に出演する予定だったという渡辺さん。最期まで舞台に心血を注いだ演劇人の、あまりにも早い死が悔やまれる。
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