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 Netflixの苦境は日本でより顕著だ。国内の映像サブスクの利用状況はAmazonプライムビデオが他を圧倒している。

国内の動画配信サービスはAmazonプライムの1強状態 動画配信ビジネス調査報告書2022より

 Netflixは「オリジナル」と呼ばれる一定期間世界で独占配信を前提とした作品の調達に力を入れており、日本においてはアニメスタジオとの連携も図ってきたが、人気ランキングの上位になるのは稀だった。この部分でも会員数減少を受けた戦略の見直しは避けられそうにない。広告視聴モデルで多少利用料が安くなったとしても、見かけ上、映像視聴に対して直接の対価が発生していないAmazonプライムからユーザーを奪うのは難しい。

 コロナ禍により世界規模での想定外の巨大な巣ごもり需要が生まれ、それはインターネットサービスの現時点での利益の限界点を示した。国内でも2020年にネット利用時間が全年代でテレビ(リアルタイム視聴)を抜き更なる伸びを見せたが、コロナ禍が落ち着きを見せる中、天井を迎えたことが各種調査からも見て取れる。

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インターネットの利用時間はすでに天井が近い。総務省が令和4年に発行した情報通信白書より

 市場がポストコロナモードに移行するなか、各サービスは広告だけに依存しない方向への戦略の見直しを余儀なくされている。わたしたちの生活にはどのような影響が出るのか、どうそれに備えれば良いのか気になるところだ。

1カ月で広告を見る時間は9000円相当?

 ITサービス側が取る手立ては、マスク氏のTwitterが認証アカウントへの課金を急いだように、私たち顧客(コンシューマ)に直接課金する方向しかない。もしそれを嫌うなら、YouTubeが既にそうなりはじめているように延々と広告を見続けることになる。

 ある調査では、20代の19%が1日「3時間」もYouTubeを見ている、という結果も出ている。仮に5分の動画に6秒のバンパー広告を5回=30秒見るとすれば、1時間あたり360秒=6分間、3時間なら18分間CMを見ることになる。これを1カ月続ければ540分=9時間。時給1000円換算なら9000円分となる。

 まだここまで大量のCMが挿入されてはいないが、時間対費用のパフォーマンスを考えれば、CM無しで視聴可能となり、動画のダウンロードもできるYouTubeプレミアム1180円は割安に見えてこないだろうか?

 一方、海外では「OTTダイエット」という言葉も聞かれるようになった。OTT=オーバーザトップとは、動画などコンテンツ配信系のサービス全般を指す。1つ1つは月額数百円~千円前後と大きな負担ではないが、それが積み上がると家計への負担は無視できないものとなる。コンテンツの重複もあるなか、できるだけ契約数を絞り込むことが家計の防衛策となるというわけだ。 

 実際、動画サービスの利用状況を見ても1年に1~2サービスしか利用しない人が全体の9割を占める。

有料の動画配信サービス利用率は28.9%に続伸、コロナ禍で動画が生活に深く浸透 『動画配信ビジネス調査報告書2022』 インプレス総合研究所より

 サービスを絞り込む傾向は、円安・物価高を受けて更に強まっていくはずだ。ITジャーナリストの西田宗千佳氏は対策として「たとえ割安であっても、1つのサービスに縛られることになる年間一括契約は避けるべきだ」と指摘する。独占タイトルなどその都度利用したいコンテンツに応じて契約サービスを切り替えた方が、結局コスパが良いというわけだ。

 インターネットサービスの利用が広告によってほぼ無料であった時代は終わり、対価を求められる場面は動画以外でも増えてくるはずだ。サービスの取捨選択、契約形態について賢さが求められていくことになる。