ウオノエはとても小さな甲殻類で、あっさり魚に食べられてしまう「か弱い」生きものだが、かなり恐ろしい習性をもっている。なんと宿主の「舌になりかわる」のだ!
エラから魚の体内に侵入し、口の中で宿主の舌と自分自身をじわじわ取り替えていき、栄養を横取りし続けるのである。仁義なき動物界でも屈指の狡猾さを誇る生存戦略には“舌”を巻くのみだ。ネタバレは避けるがゲームをプレイした人なら「シャリタツの“あの特技”にそんな元ネタが…!」と納得してくれることだろう。
さらに、ウオノエの近縁である小さな深海生物「ウオノシラミ」は、横から見るとエビのお寿司にそっくりなことで有名だ。突拍子もないようなポケモンのシャリタツも、実は生きものへの知見が複雑に絡み合って生まれた結晶なのだろう。
他にも生きものオタク視点から「おっ!」と思った新ポケモンは沢山いる。唾液に毒をもつ、数少ない“有毒の哺乳類”トガリネズミ(英語名はShrew=シュルー)を奇抜なデザインに仕上げた「シルシュルー」。
チンアナゴ的な生態だがディグダにそっくりな「ウミディグダ」(奇しくも先述のツバメとウミツバメに対応するネーミングだ。別種なのに名前は一緒という現象は生物あるある)。
ホッキョククジラを「星のカービィ」の頭身にしたような「アルクジラ」。フンコロガシの「シガロコ」(スカラベにまつわる神話を元にした進化形もカッコいい)。意外にも初のミミズポケモンとなる「ミミズズ」。メダマグモやカニグモなど、待ち伏せして獲物を襲うクモを思わせる「ワナイダー」(クモポケモン自体は沢山いるが、8本足のクモは初)などなど…。あげていけばキリがないので、ぜひその目で確かめてほしい。
最後に少し真面目な話をすると、ポケモン制作陣が多種多様な生きものから着想を得て素敵なキャラクターを生み出し、それを私たちが楽しむことができるのも、この地球に生物多様性があってこそだ。
生きものたちは(ゲームなどエンタメも含めた)人間の「文化」をも豊かにしてくれる。そのことをゲーム好きの皆さんも、ポケモンを通じて改めて感じ取ってくれれば、いち生きものオタクとしては嬉しく思う。