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「X氏はクセ強演出」「担当にはいわくつき作品が多い」

「Xさんは名作と名高い朝ドラ『マッサン』や『スカーレット』『芋たこなんきん』を担当していた印象が強いですが、実は “3大スイーツ大河”なんて揶揄される『天地人』(2009年)、『江~姫たちの戦国』(2011年)、『西郷どん』(2018年)も手掛けている。演出がハマれば強いのですが、外れた時も大きい。割と“クセ強”な演出ではありますね」

 また、NHK作品の取材が多いという記者はこんな裏話を明かすのだ。

“魔の第8週”では画面を分割した「バラエティ番組のような演出」も(『舞いあがれ!』より)

「X氏が関った朝ドラや大河ではなぜか大トラブルが起きているんですよね。まず、もともと原作者として打診されていた国鉄OBが途中で外され激怒したというトラブルが『週刊文春』(1999年6月24日号)で報じられた『すずらん』(1999年度上半期)。そして大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』(2003年)では黒澤明監督の映画『七人の侍』(1954年)との類似が話題になり、黒澤プロから著作権侵害などで訴訟を起こされています。『龍馬伝』では2011年9月に書道家・上坂祥元からとタイトルロゴの構図について著作権侵害の訴訟を起こされたり。まあ、いわくつきの作品が多いのは事実ですね」

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名作『芋たこんんきん』で“脚本改変トラブル”

 しかし、今年BSプレミアムで16年ぶりに再放送され、再評価された『芋たこなんきん』(2006年度下半期)ではチーフ演出を担当している。

「当時、Xさんは異例の大抜擢でチーフ演出になったんです。しかし途中でチーフを外れたようです。なんでも脚本の改変を巡ってトラブルになったとか。演出プランも、当時民放で人気だったドラマのトリッキーな手法を取り入れたいと主張し、周囲に大反対されたこともあったと聞いています」

 X氏が演出を担当していた第8週は大不評だったが、第9週に入って演出家がもう1人に代わると、脚本家は第8週と同じ嶋田うれ葉にもかかわらず、再び落ち着いた作風に戻っている印象だ。とはいえ、第9週後半ではシリアスな展開に移行していることから、《その落差のための第8週のコメディ演出だったのか》と解釈する声もある。

ほとんどは「登場人物一人一人の心情や背景を丁寧に繊細に描いている」と好評を得ている(『舞いあがれ!』より)

 第8週の作風の大きな変化の理由や、X氏の過去の脚本トラブルなどについてNHKに事実確認を行ったところ、以下の回答があった。

「第8週からはパイロットになるための航空学校という新たなステージに入っています。制作の詳しい過程については、お答えしていません」

 いずれにしろチーム制での脚本づくりや、途中で作風を大きく変える果敢なチャレンジを続けている『舞いあがれ!』。今後、どんな方向に進むのか、見逃せない展開になっている。