公告前にもかかわらず、「パンゲアありき」で価格交渉
〈予算として、1037万円の見積りをいただいているところですが、他の事業の規模・予算と比べて高額であることから、見積り額を用意することは難しい状況です〉
〈700万円程度に収まるよう調整いただくことは可能でしょうか〉
一方、パンゲア側は、
〈前回お出しした予算で既に2割以上のディスカウントをしており、探究の質を担保した中で最大限努力した数字となっております〉
〈前回以上のディスカウントというのは非常に難しい状況であることをご理解頂ければ幸いです〉
さらに、職員とのやり取りは何度か続き、県教委側はこう提案している。
〈頂いた参考見積を基に、財政担当部署と連携したところ、あと50万円ほど下げることができないかと言われています。探究の質をできるだけ落とさないよう、予算を削っていただきましたが、750万円程度になるよう再調整していただくことは可能でしょうか〉
「探究」とは生徒の学習活動のこと。公告前にもかかわらず、「パンゲアありき」で価格交渉していることが読み取れる。このメールはパンゲアの森理事長や県教委の課長にも同時に送付され、財政担当部署にまで言及があるなど、県教委が組織ぐるみで関与していることがうかがえる。
こうしたやり取りの後、県教委はこの事業を「公募型プロポーザル」として公告。パンゲア1社だけが申し込み、4月1日、763万5760円で受注した。メールで示された「750万円程度」という金額に極めて近い。
県職員が語る。
「この事業も教育長の“鶴の一声”で昨年度から始まったものです。『パンゲアに来年もやらせて』との指示で今年度も実施することになり、県教委が予算をかき集めた。その過程で、事前に価格交渉までしてしまった形です」
入札制度に関する著書があり、公取委OBでもある鈴木満弁護士が指摘する。
「公募型プロポーザルの公告前に業者と価格交渉までしているのは、『予定価格その他の入札等に関する秘密を教示』したと認識されますので、官製談合防止法に違反する疑いが濃厚です。同法8条の『入札の妨害』に該当する典型的な行為で、法定刑は5年以下の懲役または250万円以下の罰金です。この違反は、いわゆる“癒着”があるケースで多く見られます」