2022年5月、スリランカはデフォルト(債務不履行)に陥りました。1948年のイギリスからの独立以来、初めてのことです。6月にはインフレ率が54.6パーセントまで上昇しました。反政府デモ隊が当時のラージャパクシャ大統領の公邸に迫り、大統領は7月に家族を連れ国外に逃亡しました。

 これまでスリランカは、ラージャパクシャ一族に強固に支配されてきました。一族は、スリランカが破綻する前、国家予算の75パーセントを握る政治のポストを牛耳り、中国から大金を借りて、私腹を肥やしていました。そして気づけば、中国に借金漬けにされ、従属化していました。僕はある意味で、スリランカは今回破綻してよかったと思っています。一族と中国の影響力を取り除き、再スタートするチャンスなのです。

スリランカの反政府デモの様子 ©時事通信社

神格化された、初代ラージャパクシャ

 スリランカは、多民族・多言語・多宗教国家ですが、シンハラ民族が多数派で、約70パーセント。少数民族のタミル人の過激派との間で、26年に渡る内戦がありました。僕の友達もそこで亡くなりました。その戦争が、2009年に終わりました。中国から政府軍への武器の提供もあったと言われています。その頃から国内に華僑が増えていったという記憶があります。

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 その時の大統領が、初代(マヒンダ・)ラージャパクシャでした。彼の弟で、当時国防次官だったのが、逃亡した2代目の(ゴーターバヤ・)ラージャパクシャです。初代ラージャパクシャは、戦争を終結させたということで、神格化されました。彼は10年に渡って大統領の座にあり、その間に、一族を政治や企業の要職につける文化を作っていきました。その後、今度は弟を大統領選に担ぎ出します。彼も戦争のヒーローなので、少数派のタミル人からの支持は得られませんでしたが、勝利しました。

 その際彼は、人気を得るためのマニフェストを掲げました。それがその後の経済破綻に繋がっていくわけですが。