「双11(ダブルイレブンセール、中国最大のECセール)ですか、なんも買ってないですよ」

「00后(リンリンホウ)」と呼ばれる、中国の2000年代生まれのZ世代と話すと、こんな声が返ってきました。彼ら彼女らは、それ以前の世代に比べてどうも物欲がないと言われています。

 中国では10歳の違いが結構大きく、日本よりもあっという間に年寄り扱い・オワコン扱いされてしまいます。若者の消費はトレンドを作り、話題を提供するので重要なのですが、本来は物欲があるはずの若い中国人がモノを買っていない。私が中国を見てきた20年のなかでも、経験したことのない由々しき事態です。

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「なんでもかんでも」から「一点豪華主義」へ

 当初はハイテクを駆使した中国のゼロコロナ対策も、ハイテクが仇となりグダグダに。一部地域では暴動が発生し、その動画は中国のインターネットの壁を超えて世界中に流れてしまっています。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、感染者がいれば産業が止まり、ひいては新商品が作れない・運べない・売れないという事態が発生しています。

 こんなどんよりした空気の中で消費者デビューする「00后」は、モノを買いたくても買えなくて大変ですね……と想像しがちですが、どうもそれだけの話ではないようです。

 本来なら散財祭りとなるはずの「双11」が、2022年はどうにも盛り上がりませんでした。アリババグループ傘下のECサイト「天猫」や、ライバルの京東商城のECサイト「JD.com」はこれまで「GMV(流通取引総額)で新記録を達成した」と毎年のようにアピールしていたのに、その数字を今年は出さなくなってしまったんですよね。

 中国メディアは「理性的な消費の新時代が到来した」なんて報じていましたが、ただ単に今年は売れなかったのでしょう。若い世代が新しいモノをそれほど消費しなかったことが、盛り上がりに欠けた一因かと思うのです。

 今の中国の若者は音楽やアニメ、映画のサブスクを利用し、オンラインゲームにもまあまあ課金します。育ち盛りで軽食も食べる。一方でモノの消費は、なんでもかんでも揃えていくのではなく、「一点豪華主義」になっているようです。

 日々の消費ではお買い得だったり安かったりする商品を買い、自分の趣味、やりたいことに対して高いお金を払う。例えば、ゲーム用にスペックの高いゲーミングスマホを買うとか。まさに消費も日本のスタイルを追っているといえるでしょう。