館内はまさに高級ホテル並
私の老後のテーマは海と山の見える東京でない場所に住むこと。完全なプロの介護が受けられるところだ。探し歩いていろいろな「老人ホーム」を訪問した。そしてやっと見つけた千葉の鴨川湾を望むホームは、まだ誰も入居者はおらず建設途中だったが、小高い丘の上にあるタワーマンションのような豪華な施設規模や、部屋から見ることのできる見事な景観にぶっ飛んだ。もうこうなるとお金の問題ではなくなった。
現在、私は18階の部屋に住んでいる。この高さから見る風景には身も心も魅了される。重い雲や街の明かりが部屋から眼下に見える。湾には小さく点になったサーファーが映る。美しい外房線が走り、鴨川市(人口3万強)の街の灯が灯る頃、濃い霧とみどりの山々が迫ってきて、トンビが飛び回る。
館内はまさに高級ホテル並で、スタッフの対応もいい。亀田メディカルセンターによる介護病棟、クリニックはもちろんのこと、食堂、図書室から露天風呂、各種会議室、ジム、カラオケ、ビリヤード、プール、卓球、アトリエシアタールーム等々の完璧なこの施設内なら死ぬまで優雅に暮らして行けると思った。
コロナ禍の中、私は妻に相談した。「これからの老後、離婚はする気はないができたら別居させて欲しい」と無茶なお願いをした。「そうね、あなたは前から海の見えるところで一人死にたいと言っていたものね」という素晴らしい回答を得た。
入居金6000万円は掛け捨て
私が支払った入居金は6000万円。部屋(65㎡)の内装は全部自分持ちだ。
入居金は90歳になると全て償却されてしまい、自分の財産にもならず売り買いもできないということだ(途中退室の場合、幾分かは返却される)。そして毎月ホームの維持のためサービス料、共益費、食費等が20万円近く徴収される。さらには電気水道代、医者代、酒などの遊興飲食費、交通費等毎月10万円以上かかる。
私の場合は90歳まで13年として毎月の出費は約30万円×156ヶ月=4680万円かかることになる。90歳以上生きるとなると部屋はキープされるが、死ぬまでに1億円以上かかってしまうのが高級老人ホームと言われる所以なのだ。